気に留める私と善法寺伊作 ページ46
私と善法寺くんはよく話すようになった。
でも時折私は彼から目をそらして前のような日常を送っても良いのだと考え込んでしまうのだ。
「柳さん。どうかしましたか?」
ほらまた貴方は私の前に現れる。
「手伝ってくれてありがとう」
「いえいえこれぐらい大丈夫ですよ」
隣には人の良い笑顔を作った善法寺くんがいる。
不運だ不運だと事あるごとに言う彼は私が側にいると何故だか不運にならないと言う。
それが仲良くなったきっかけ。
「これ全部、用具倉庫までですよね。留三郎がいれば話が早いですけど……」
「報告もしなきゃいけないものだから善法寺くんは先に帰っていてもいいよ?」
「僕も手伝いますよ」
彼は仕事をよく手伝ってくれるようになった。
今も大荷物を抱えていた私を手伝ってくれていてくノ一教室の子達が不運だけれど優しくて格好いいと噂しているのも頷ける。
事あるごとにくノ一教室の子たちの色の授業で「善法寺先輩を狙う」だとか「今度こそ落とす」だとか物騒な会話も耳に入ってきている。
彼女たちには私は女子として映っているらしく、女子会と称して様々なことを聞けてしまうのだから事務員という立場も侮れないものだ。
まあ、私は秘密は漏らさないのだけれども。
だから、今度の色の実習では忍たまからの口吸いを合格条件にしていて善法寺くんが多くのくノ一から色仕掛けをされるであろうことも言わない。
「大丈夫ですか?」
隣を見やると善法寺くんが心配そうな表情を作って顔を覗き込んでいる。
やめておけばいいのに。こんな男なんて。
勿論、そんなこともくノ一教室の子たちには言わない。
「すみません。少しぼうっとしてて」
そう言うと目の色を変えて医務室に引きずってでも連れて行こうとする。
そう。彼はそんな人だった。
もうずっとこのままでいれば良いのに。
「あっ!留三郎!用具倉庫に ーー」
そう言って穏やかに微笑んで食満くんに向かって走り去る彼の背景は全然穏やかとも言えるものではなくて私の心を見透かしているような厚い雲が空にかかっていた。
彼の足が絡まって食満くんに向かって転ける。
持っていた荷物を彼の同室にぶちまけて巻き込まれ不運というくノ一教室の呼び名も伊達じゃないと思った。
彼もくノ一教室の子たちから狙われている人の1人なのだけど。
そして、私たちの行く末を暗示しているのか雨が降り出して私はたまらなくなって目を背けた。
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さえき やなぎ(プロフ) - 朱星姫さん» 朱星姫さん、コメントありがとうございます!評価ボタン…をですと…!自己満足とはいえ評価が貰えるとは…とても嬉しいです!これからも更新頑張ります^_^ (2018年3月23日 14時) (レス) id: c81b01f34d (このIDを非表示/違反報告)
朱星姫(プロフ) - 素敵な内容ですね!毎日来るたびに評価ボタンを押してしまいます…! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 789145a355 (このIDを非表示/違反報告)
さえき(プロフ) - 泡沫 ザクロさん» 泡沫 ザクロさん、コメントありがとうこざいます!女好き系…自分でも気に入っているのでそう言っていただけるとはとても嬉しいです!これからもシリーズを続けていきます^_^ (2018年3月20日 22時) (レス) id: c81b01f34d (このIDを非表示/違反報告)
泡沫 ザクロ(プロフ) - 女好き系がもっと見ていたいです〜! (2018年3月20日 20時) (レス) id: 818f5c4556 (このIDを非表示/違反報告)
さえき(プロフ) - めづさん» めづさんコメントありがとうございます!レスを押すのを忘れてしまっていたので慌ててもう一度送りました^^;慌て者ですみません… (2018年3月17日 23時) (レス) id: c81b01f34d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年2月20日 19時