逢魔が時の神隠し ページ14
〜SIDE渉〜
時は少し遡り、英がフラマを呼び出していたころ。
渉は一人で家路を急いでいた。と、ふとその足を止める。
「…父さんのお墓参りでもしていこうかな。お盆にも行ったばかりだけど…」
ならば、引き返して商店街で花でも買おう、そう思って振り返った。ついさっきまで、道には渉以外の誰もいない筈だった。が、しかし。
「…!?誰、ですか」
「……」
尋ねるも、相手は言葉を発しない。
ふと、相手が手に何か持っているのが見えた。あれは確か、魚を焼くための…そう、『ハサミ』という串ではなかったか。
それに気づいた瞬間、渉は戦慄した。そのまま踵を返して全力で走る。
今は日の傾きかけた夕方、つまり逢魔が時。相手が持っていたのはハサミ。
ならば、あれの正体は。
「隠し神…!しかも、油取りだ…」
油取りとは、明治維新ごろに東北で噂された妖怪の一種である。
子供、特に女の子を攫い、その体を絞って油をとるとされる妖怪。日の傾く夕方ごろに現れ、子供から油を取る際にはハサミを使うとされている。
兎に角、あれに捕まるわけにはいかない。
追いかけてくるそれを撒くように、右へ左へと曲がりながらひたすらに走る。
そして、ある角を曲がろうとしたその時だった。
ふっ、と目の前に黒い影。それが誰なのか判断することは、残念ながら渉にはできなかった。
「…残念でした、渉ちゃん」
「っ!!」
直後、頭部に重く鈍い痛み。
前頭部を強く殴られた渉は、なす術無くその場に倒れこんだ。意識が朦朧としていく。
意識を完全に失う直前、自分が抱えあげられてどこかへと運ばれていくような気がした。
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作者名:Lemon | 作成日時:2015年11月5日 1時