389.見据える ページ12
「もういいだろ?一緒に日本に帰ろうぜ。な?」
あの時と同じ台詞に、ただでさえ速打つ心臓の鼓動がさらにそのスピードを上げる。
フラッシュバックのように思い出される場面に、呼吸が苦しくなるのを感じたその時、ドンヘが彼の上着の背を掴んでいた私の手をしっかりと握った。
大丈夫。
俺がついてる。
彼の温もりと共にそう言われている気がして、目を閉じて深呼吸を繰り返した。
「彼女を日本に返すことはできません。」
「・・・なに?」
彼の口調が一気に冷たさを増す。
「彼女はこの国で、僕と一緒に生きていく決断をしてくれました。僕たち・・」
「待って。」
ドンヘの背後から、彼の隣りへと進み出る。
大丈夫よ・・。
あなたがいれば、・・もう怖くない。
心配そうに私を伺う彼と一瞬だけ目を合わせて、繋がれた手を今度は私が握り返した。
『私達、結婚したの。』
今日初めて・・そうじゃない。
彼の暴力を最初に受けた時以来ぶりに、彼の目をしっかりと見据えてそう言った。
「・・・」
いつも、私から逸してしまっていた視線。
なのに、一瞬動揺を見せた瞳が、初めて彼の方から逸らされた。
『随分痩せたわね・・。ちゃんと食べてるの?寝る所はあるの?』
『・・・るせえ・・』
青白い肌に、痩けた頬。だらしなく伸びてしまった髪に、ヨレヨレの服。
彼からは、約1ヶ月の逃亡生活の疲労が色濃く滲み出ていた。
「あなたに母親を求めていたのかもしれないわ。献身的な、見返りを求めない愛を。」
「どんなことをしてもあなたを繋ぎ止めて置きかったのね、きっと。残念ながらその方法は間違っていたけれど。」
ドンヘとヌナから聞いた、彼の過去は衝撃的なものだった。
母親は病を苦にして自ら命を絶った。
愛してやまない一人息子を残して逝かなければならない運命に耐えられなかったのだろう。
彼は、母親が死ぬまで彼女が患っていたことを知らなかった。
母親の死後、彼は親戚中をたらい回しにされたそうだ。
誰も彼に愛情を与えてはくれなかった。
彼らの目的は、彼が受け継いだ両親からの莫大な遺産だけ。
でも後見人のお陰でそれが自由にならないことがわかると、誰とも口を聞かず、問題ばかり起こす彼をすぐに放り出した。
そして、二十歳になった彼は、全ての遺産を手にし姿をくらました・・・。
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さあ(プロフ) - 更新楽しみにしてます:;(∩˙˙∩);: (2014年4月14日 15時) (レス) id: 1dbacc4eda (このIDを非表示/違反報告)
なりは(プロフ) - dongloveさん» こちらこそありがとうございます(*^^*)。出来るだけ更新できるよう頑張ります☆ (2014年1月16日 2時) (レス) id: 40584f4527 (このIDを非表示/違反報告)
donglove - そうですよーーー。 ドンヘぺんです。自分の過去に傷があり、そこをsjのみんなが癒してくれたりかばってくれたりするのが読みたかったんです。まさにこの作品ですねww書いてくださって感謝しています。ありがとうございます。 (2014年1月15日 20時) (レス) id: 683ddb18d9 (このIDを非表示/違反報告)
なりは(プロフ) - dongloveさん» コメントありがとうございますo(^▽^)o♪ニックネームから見て、dongloveさんはどんへペンさんでしょうか?なかなか甘い2人を書く事ができませんが・・・これからの2人の行く末をどうか見守ってくださいね^^。 (2014年1月14日 20時) (レス) id: 40584f4527 (このIDを非表示/違反報告)
donglove - 現実と小説がごちゃごちゃになってしまいましたWW。この作品すっごく好きです。更新楽しみにしてます。 (2014年1月14日 0時) (レス) id: 683ddb18d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なりは | 作成日時:2013年8月14日 14時