少しだけの嘘 ページ30
阿鳥side
『え、あの、えっと、先輩？』
そう言ってオロオロするAちゃんの背中を、小さい子をあやす様に優しく撫でる。
暫くすると彼女は落ち着いたのか静かになった。
｢さっきも言ったけど俺、このホテルに来て良かったと思ってるんだ｣
『...なんで、』
｢皆に会えたから。
支配人や瑪瑙さん、ルリさんに音子ちゃん、今までのお客様。それに......
Aちゃんにもね｣
このホテルに来なければ、皆に会えなかった。
これは大きなことだ。
『確かに、それはそうですけど...
阿鳥先輩は、死んじゃいけなかったんです』
...また声が震えている。
｢だけど、Aちゃんは本気で大外様のことを憎んでないよね？｣
『.........え』
Aちゃんから離れて顔を見ると、頬が濡れたまま驚いていた。
『そんな、私は......大外が嫌いで......』
｢君は優しい子だから、俺のことだけじゃなく大外様のことも考えてるんだろ？｣
『.........私は、』
これは音子ちゃんには無い優しさだ。
彼女はこれからも突っ走る音子ちゃんを支えて行ってほしい。
｢...Aちゃん、お別れの前に約束して欲しいんだ｣
『約束？』
｢うん。
...これからも音子ちゃんやルリさんと仲良くすること。｣
『......はい』
Aちゃんは俺から目を逸らす。泣くのを我慢しているみたいだ。
｢自分の部屋には必ず鍵をかけること｣
これは俺が起こしに行った時のことだ。
最近あった事が濃すぎたせいか、もうだいぶ昔のように感じる。
『.........はい、』
拳を握りしめるAちゃんの手を優しく元に戻しながら、俺は最後の約束を言う。
｢それから今この瞬間を忘れないこと。
...こんな経験、そうそうできないからね｣
──────少しだけ、嘘をついて。
＊＊
.
.
やはり別れと言うのは寂しいものだ。
...だけど今は。
『私、ぜったい、絶対に.........阿鳥先輩のこと、忘れませんから......！』
今は彼女のその言葉があるからか、寂しくなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 280人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤(プロフ) - さら丸さん» コメントと読破ありがとうございます！！！！サイコーと言って頂けて嬉しいです...！！頑張った甲斐がありました(;_;) (2022年3月2日 2時) (
レス) id: cd414864d2 (このIDを非表示/違反報告)
さら丸 - ｽｩ…………好きｨｨｨｨｨｨｨｨｨイイ！！サイコーでした！！！！ (2022年2月20日 20時) (レス) @page50 id: f75e97b3f4 (このIDを非表示/違反報告)
赤(プロフ) - 名無しのヤンデレ好きさん» わーー！！そう言って頂けてすごく嬉しいです(TT)どういう風に完結させようかもの凄く悩んだんですけど、、良かったです^^こちらこそ読んでいただきありがとうございました！！ (2019年8月8日 2時) (レス) id: f808b76a9b (このIDを非表示/違反報告)
名無しのヤンデレ好き - あーーーー！！！！すっっっっごく好きです！完結して涙が出ます笑笑なんか、ほんと、好きです！！もう誰ソ彼ホテル好きすぎて…。素晴らしいお話と感動をありがとうございました！ (2019年8月7日 23時) (レス) id: 0445038fa5 (このIDを非表示/違反報告)
赤(プロフ) - ここまで自分の好きな要素や展開を広げたお話は初めてだったので楽しく書けて幸せでした...本当にありがとうございました。この先のお話は皆様の想像にお任せします笑 それではまたどこかで！ (2019年7月6日 4時) (レス) id: f808b76a9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
