108＊これ以上は ページ19
しばらく手を引かれて歩いていると、緑が残っていて思わずまじまじと木々を見つめた。
洞穴付近より被害が小さい。
｢……初めて来た。同じ森なのに、なんか変な感じするな｣
｢そうなのかな、……もうすぐ着くよ｣
小道の奥へ進むと、そこには小さな木造の家がぽつんと建っていた。
絵本に出てきそうな雰囲気で、Aは慣れたように扉を開けた。
現代のような入り組んだ造りではなく、部屋が二つあるだけの家。
釘打ちなんかを見る限り、一から手造りっぽい感じもする。
｢このお家が無事で良かった……。ここはね、おかーさんと一緒に住んでたお家なんだよ｣
｢母親と？｣
｢うん。ゾムと出会う前は、ここで住んでいたの｣
Aは懐かしむようにして言った。
家に入ってすぐの部屋はキッチンとテーブル、もう一つの部屋はベッドが置かれてあった。
埃が薄く被っているのを見て、少し切ない気持ちになる。
小さな棚に写真立てが置かれてあるのを見つけた。
今より更に幼い姿のAと、よく似た大人っぽい雰囲気の女性には獣耳。
間違いなくAの母親だ。
｢これ、｣
｢ん？その人がおかーさんだよ！……でも、おとーさんの写真は見たことなくて｣
Aの父親、か。
今もどこかで生きているのか、Aが生まれる前に死んでいるのか。
Aの両親が生きていたら、どんな感じだったのだろうか。
そもそもおれたちは、出会っているだろうか。
様々な思考がぐるぐると巡る。
｢ゾム？｣とAに声をかけられて、はっと我に返った。
｢……どうしたの？｣
｢や、何でもない……｣
｢…………そっか｣
Aは部屋を歩き回ったり棚を開けたりと、落ち着かない様子だった。
会話が途切れ、どことなく気まずい雰囲気になる。
Aはゆっくり振り返り、目を見て言った。
｢わたし、過去に戻りたいとは思わないよ。今はゾムがいるんだもん｣
｢へ？｣
｢……あのね、ゾム｣
一歩、二歩とこちらに近づき、服の裾を弱く引かれた。
ドキリと心臓が跳ねて、体に熱が籠る。
｢……わ、わたし、…………｣
｢…………なに、？｣
Aの目がきらり、窓から差す日の光が反射してか桃色に見えた。
いつしかの満月の夜を思い出させる目。
｢……ずっと、ゾムと一緒に居たいの｣
｢だからね、……わたしと、｣
Aは目をきゅっと瞑って、頬を染めて口を開く。
……これ以上は、
｢＿＿＿＿番の関係に、なってください｣
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りこち(プロフ) - \( 'ω')/ｴﾝﾀﾞｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｲﾔｧｧｧｧｧｧｧｧ (2021年3月16日 13時) (
レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
ひとほ(プロフ) - おわたああああああああぁぁぁ！ありがとうございました!!!!!!!!!これからもよろしくお願いします！（これからも見るので） (2021年3月6日 9時) (レス) id: 542167216b (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ただひたすらにときめきました！ああああああ2人が可愛すぎるううう (2020年8月25日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきい - んううああああああ！嬉しみいいい！！！！ (2017年11月5日 15時) (レス) id: f1013ba797 (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 留さん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けてとても嬉しいです…！他作品、次回作でもぜひよろしくお願いします。ご愛読ありがとうございました！ (2017年11月4日 13時) (レス) id: 8114bfeb32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：影猫
| 作成日時：2017年8月27日 0時
