プロローグ ページ1
「会議を始める前に一つだけ聞きたいことがある」
「どしたんグルちゃん」
「何か降ってくるような音がするのは俺の気のせいか?」
「今日の天気は一日中晴れやで」
我々国の幹部たちが首を傾げた瞬間、バキッと不穏な音を立てて会議室の天井は崩れ落ちた。それはそのまま部屋の中心に置かれていた机もぶち抜き煙を上げる。
「上からなんか落ちてきた!?」
「なんや敵襲か?」
謎の墜落物から数分後、晴れた煙の中にいたのは──
「…女の子?」
「誰やあんた!?」
「ほへんほほふぁいふぁ!」
真っ赤なリンゴを山ほど抱えた、綺麗な顔立ちの子供だった。
幹部たちを睨みながらも、リンゴを手離さないどころか黙々と食べ続けている。
「天井ぶち破って来たのにのんきにリンゴ食っとるでコイツ…」
「飲み込んでからでええから状況説明してもろて」
「おめんどこそだいだ!」
「ごめんそれ何語?」
ーーーーー
子供はしばらく大声で何かまくし立てたあと、ハッとして「……もしかして、通じてない?」と不安そうに呟いた。
「さっきのは何言ってるかさっぱりやったな」
「出来るなら今みたいに話してくれると助かるわ」
「……お前たちこそ誰だ、と聞いた。それにここはどこなんだ?」
「はえーすっごい訛り。どこの方言なんそれ?」
「知らない。それより早くそっちの名前を教えて」
むっとした顔で子供が話すと、白い軍服の男が一人歩み出た。彼は子供と目線を合わせるようにしゃがみ込んで話しかける。
「俺の名前はひとらんらん。それからここは、我々国っていう国なんだ。ここの奴らは人数が多いから、とりあえず君の名前を教えてもらっても良いかな」
「…A」
それまでつっけんどんだったにも関わらず、ひとらんらんの問いかけに素直に応じた子供に幹部たちが少しざわめく。
「A、か。良い名前だね。君はどこから来たの?家族とか、お友達とかも一緒にいる?」
「分かんない。父さんも母さんも居ないし…と、友達はリンゴ狩りに来なかったからここには居ない」
「そうなんだね。あとは…なんでここに落ちて来たのか聞いても良い?」
「……から」
「ん?」
「瞬間移動できるから」
『!?』
ーーーーー
【余談 遠巻きに見てた先後輩の会話】
「コネシマ先輩、あの子めっちゃ可愛くないですか?」
「あれ声的に男やろ」
「薄々そんな気はしてたけど見た目がクリーンヒット過ぎて認めたくない」
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作者名:うるち米 | 作成日時:2022年8月13日 16時