検索窓
今日:35 hit、昨日:17 hit、合計:60,356 hit

第65話 自分にできること ページ18

「よぉ。ウチの者が世話になったみてーだな」
「ベニマル殿!」
「お待たせ致しました。ガビル殿」
「おお、A様もご無事で!」

 空間移動を行って出てきた先は、ガビル殿がいる場所だった。

「……なんだ。この状況は」
「こちらの方は、竜を(まつ)る民の神官戦士団。ミリム様の麾下(きか)なのであります」
「何? ミリム様の!? ……って事は、敵ではない? ……一応確認しておく。クレイマン軍はほぼ壊滅したが、アンタらは今も戦う意思があるか?」

 男の背後で、少年が首と手を激しく横に振って戦意喪失していることを示す。
 しかし、禿頭(とくとう)の男は戦争を続ける意思はないが、戦う意思はあるというとんだ脳筋だった。表向きは平静を保っているものの、内心は傍らにいる少年と同じく驚いているし、若様も満面の笑顔で男に『なるほど。気が合いそうだ』と告げて、ガビル殿と自分双方を驚かせた。そして、若様が実は好戦的な性格であられた事を久方ぶりに思い出し、彼に気づかれぬよう頭を抱える。

「若様……」
「解ってる、A。それに、戦うなら殺す気で挑まなきゃ、負けるのは俺だろうしな」
「どうかな。あのカリュブディスを(ほふ)った攻撃は、さすがに(わし)も耐えられそうにないがのぅ。……まぁ、使わせる前に倒す自信はあるがな」
「ほぅ。言ってくれるじゃないか」

 すかさず、ガビル殿と少年のツッコミを受けて一時的に口を(つぐ)み、少年から『空間移動系の魔法を使わないと、援軍は無理なのでは?』という至極(もっと)もな質問をされ、戦場(ここ)まで送り出された事の顛末(てんまつ)が脳裏に浮かぶ。そして、人間一人では高度な計算はできないので、誰か別の者──リムル様が言う、機械並みの演算能力を持つ人工知能──が背後にいると推測するも、それをリムル様直々に尋ねるなど野暮だ。

「……マジすか。今までの常識を覆す軍団(レギオン)魔法(マジック)をその場で開発!? アリですか、そんなん……」

 少年が気の抜けたような、呆気に取られたような腹に力のこもってない声と表情で若様に告げると、若様とガビル殿は互いに顔を見合せ、若様が断言した。

「なんでもアリなんだよ。ウチの大将は」
「そうですね」

 若様に投げやりに同意して答えてから、一度咳払いして彼に向き直り、『自分も負傷者の手当てをして参ります』と告げ、一礼後に彼らの支援へ向かった。

第66話 言付け→←第64話 無視すべき感情



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (149 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
341人がお気に入り
設定タグ:転生したらスライムだった件 , イケメン女子 , ベニマル   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

竜胆(プロフ) - 葉月さん、ありがとうございます。ようやく三竦みの戦いになりましたので、楽しみにして下さい。更新頑張ります。 (2023年5月4日 17時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
葉月 - いつも楽しく読ませていただいています!これからも応援してます更新がんばってください (2023年5月3日 23時) (レス) id: 63cb68265f (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 栞を挟んで下さった方が、300人を越えました。更新頑張りますので、よろしくお願いします。 (2023年1月4日 8時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - いつの間にか百票突破! 皆さん、ありがとうございます。 (2021年9月9日 1時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 気がついたら、お気に入りにして下さる方が200人越え。ありがとうございます! (2021年3月27日 15時) (レス) id: 51177a25d0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:竜胆 | 作成日時:2019年5月13日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。