第8話 着せ替え人形 ページ10
「A、変わってくれ。俺は疲れた」
「かしこまりました」
女性陣の着せ替え人形と化していたリムル様は、あっけなく交代を申し出られた。すると、『待ってました』と言わんばかりに、あたしの採寸を基に作られた服を持参し、ズラリと並べられる。
「A様。格好の良い服をお召しになって下さい」
「いいえ。A様は、可愛いほうがお似合いです」
「そんなに焦らなくていい。時間の許す限り、全て試着しよう」
なぜか、この一言で熱を帯びた視線が増した。そして、彼女達が丹精こめて一針一針縫ってくれた服に、順番に袖を通していく。
「よく似合ってるじゃないか」
「お褒めに預り光栄です。リムル様」
宣言通り全てを着こなすが、先程までリムル様が着ていたヒラヒラの多い女の子らしい服装は、反射的に鳥肌が立ってしまう。つまり、体と心が拒絶反応を起こすのだ。
どれほど着たのか脳が数えるのを諦めた時、背後に櫛を手にした姫様が立っていた。
「少し休憩を挟むついでに、髪を解きますね」
「姫様の手を
「A。あなたは、いつも私の命を守ってくれました。少しくらい、ワガママを聞いてもいいでしょう?」
「……では、お言葉に甘えて。お願いします」
髪を整えて頂くうちに、心地よさから眠気が襲い、『これが最後ですよ』と言う姫様の言葉を信じ、時々よろけつつ着替え終了。
リムル様の言葉を借りるなら、裾に短い切れこみが入った白の『ノースリーブタートルネック』と、若干透かしが施された腰丈の黒『タイツ』。その上に、やたら丈の短い『ホットパンツ』を履き、頭巾の
さらに、珍しくリムル様の注文は続き、
「いいな! じゃあ、上着をずらして、肩と二の腕を出してみてくれ。『萌え袖』を演出したい」
「……こう、ですか?」
モエ袖の意味を分かりかねるが、上着を着崩したために手の甲が半分ほど隠れた。
護衛中は何があっても主の傍を離れないが、女性陣の押しの強さから引き受けてしまう。頬が緩みきったリムル様と姫様が、誰かに声をかけた。
「お兄様。私達が作った服をAに着せてみました」
「どうだ、ベニマル。かなり男心をくすぐられるだろ」
誇らしげな二人に対し、あたしは彼に会釈を返し、意見を求められた若様は顔の下半分を隠して、赤面したまま一度頷かれた。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時