第46話 友の死 ページ48
「魔物を殺せ!」
平和は突然崩れ去る。
念話も困難で、外部と連絡が取れない。
シオンや住民の死亡を目の当たりにした。
高笑いする人間共の存在が、ただ煩わしい。
強力な脱力感が襲う中、体術で防御する。脳が情報を整理する間、体と口を動かした。
「もう相手にするのも飽きた。地面に這って、今すぐ謝罪しなさい。それから十分
悲鳴をあげてのたうち回り、もはや声にならない声で謝罪をし続け、情報を吐き続けるヒトに、なおも言葉を続ける。言葉の裏に隠した意味は、こうだ。
『全員、利き手と逆の腕を斬れ。両脚を切断し、全ての情報を寄越せ。喉を突き、意識を手放すな』
無意識にエクストラスキル『
人間達は、それまで魔物達に向けていた刃を自分に振るい、苦痛や恐怖。絶望や憎悪に満ちた顔を浮かべたまま、全員意識を保っている。だが、それでも怒りは収まらない。頭に血が上り、『言葉遊び』で饒舌になっているあたしの死角から、誰かが左手で顔の下半分を覆う。
骨ばっている。男の手だ。
断片的な情報を処理するより速く、顎をしっかりと掴まれ、強制的に誰かのほうに向かされた。
誰だ、お前は。あたしの邪魔をするな。
念話ができないために胸中で相手を罵るが、わずかに空いた隙間から声が漏れ出るだけだ。怒りに任せて、それを
「あとは俺達がやる。今は黙ってろ。A」
若様は何食わぬ顔で距離を取り、周囲の好奇からくる視線を物ともせず、淡々と、的確に指揮を執られた。しかし、乙女心に疎い己の脳は、お花畑にならずに冷静に状況整理を始め、この惨劇の中で成すべき事を成すために行動に出る。
リムル様が帰ってくるまでに、大通りに無惨に散らばり、積み重なっている住人の遺体を、一人一人丁寧に冷たい石畳の地面に寝かせていく。一番最後に運ばれて来たのは、シオンだった。
「……起きてよ。シオン」
頭は、彼女が『死んだ』と認識している。だが、心は、それを
シオンが死んだなんて嘘だ。呼びかければ起き上がって、普段通り挨拶を交わしてくれるはず。
二人の護衛の目に、涙は無かった。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時