第42話 夢見 ページ44
「今日は休みか?」
「さあ? もしかしたら、寝過ごしているのかもしれません。私が起こしに行ってきます」
シオンが靴を脱いで上がり
「Aっ!? A、
まだ早朝。
しかし、普段は朝稽古の支度を終え、玄関に来ている頃合いだ。だが、俺の記憶間違いでなければ、Aが病気にかかった事は一度もない。その時間に起床していないとは、何かあったのか。
爺に思念伝達で『Aに異変あり。稽古に遅れる』とだけ伝え、
Aが自分で自分の首を握力と糸で締め上げ、息も絶え絶えに何か言葉を発している。
「苦しい…っ。誰、か…っ…助けて…。死に、たく、ない」
彼女の目尻から涙が溢れる中で、枕元に座っている寝間着姿のソウエイが、小刀で首に巻きついている分厚い糸の束を切断し続ける。しかし、切った直後にそれが再生し、再び締め上げていった。
このままでは、確実に死ぬ。
そう判断した俺は、Aの先祖の名。血縁者の子孫である、リアムやノワールが口にした名を呼んでいた。
「起きろ、A。ツムギさんはここにいない」
叫んだわけでもない。
普段の声量より、幾分張りが無い声だった。
それでも、悪夢に悩まされている護衛の耳に届いたらしい。か細い声が聞こえる。
「…誰?」
「反応がッ!! それは夢だ。A。戻ってこい」
ソウエイの焦った声を聞くのは初めてだが、それよりも絞首していた糸が徐々に緩み始めたのを見逃さず、褐色肌の手を色白の肌に重ねて、細い首から引き剥がそうと試みる。シュナとシオンも、皆で名を呼び続けた結果、首から手が離れ、激しく咳きこみながらも目覚めた。
「…げほっ。……? なんでみんなが、あたしの部屋にいるんですか?」
目尻から涙が
「貴女が悪夢にうなされていたようなので、私が来てみれば、自分の手とスキルで首を絞めていたんですよ?」
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時