第40話 返り討ち ページ42
「ただいま」
「お帰りなさいませ。若様」
「お兄様。Aをどうにかして下さい」
夜に独り稽古を終えた帰宅直後。Aがシュナを軽々と横抱きにしたまま、俺を玄関まで出迎えてきた。そして、水分補給のために居間に行くと、まだ風呂に入っていないであろう女性陣が、一様に畳や机の上に突っ伏している。
「……何があった？」
「今夜の女子会の題材が『女性の憧れ』でして、あたしが男役を演じただけでございます」
「演じただけで、ああなるのか？」
「どうやら、そのようで」
最初は
嗚呼。彼女の男前な性格にやられたクチか。
状況を把握して、自分が使った湯呑みを軽く水で
「とりあえず、シュナを降ろしてやれ」
「嗚呼。そうでした」
赤面する妹は、怒った振りをして護衛に命令した。
「貴女も女性なんですから、女の気持ちを知りなさい！」
「シュナ様の
座布団を枕にしていたシオンの言葉を皮切りに、他の女性陣も『そうだ。そうだ』と口を揃えて賛同する。それに対し、男役に任命されていたAは、納得がいかないらしい。
「それで、俺はAに何をすればいい？」
「この項目を、全て実行して下さい」
シュナから手渡された布に目を通す間、護衛が逃亡しないように、しっかり手を握る。
熟読後にAを見下ろせば、『覚悟を決めた』と言わんばかりの真剣な表情に、
「それじゃ、さっそく運ぶとしよう」
「え？」
さっきまで妹を横抱きにしていたお姫様抱っこを、簡単にやってのけた。
項目順に実践すると踏んでいたAは、呆けた表情のまま俺を見上げる。俺は、そんな彼女の視線を受け止め、目を細めて笑った。
「黙って俺に抱かれてろ」
「は、はい…」
両手で顔を覆っても、隠しきれていない額の一部や耳が真っ赤な眼前の
こんな機会がなければ触れられない己を胸中で嘲笑いながら、注目を集める女性陣の中心で立ち止まって腰を降ろし、後ろから優しく抱き寄せ、俺を男と認識しない彼女に反撃した。
「どんなに格好良くても、俺の前では独りの女性だと自覚してくれ。A」
「その言葉はずるいです」
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (
レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達！ ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります！ (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです（笑）これも竜胆さんの文才の力ですね！これからも更新頑張ってください！ (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竜胆 | 作成日時：2018年12月1日 1時
