第26話 言葉巧みに ページ28
「俺が帰国する頃には、ちゃんと家に帰っているだろうと思っていたんだが、今度は、『リアムと一緒に魔都に観光で出かける』と門番に言ったっきりだ」
危うく『まるで
「もしかしたら、兄の気を引きたいが故の行動かもしれないな。……実は、あたしにも弟がいてさ。よく口喧嘩したよ」
「へぇ、そうなのか。たとえば?」
「『そんなに勇ましくては、嫁の貰い手がない』だの『もう少し女々しければ、縁談が舞いこむでしょうに』だの、大半があたしの性格の事だったよ」
「うわ。容赦ねぇ」
「ああ。でも、事実だ。あたしも『護衛の任に就いている以上、弱くては話にならん。女らしさを要求してくる殿方の縁談なんて、こちらから願い下げだ』と、一時期は反論していたんだけどね」
そこで一度、意図的に言葉を切る。この後で、もう一つの提案に乗ってもらう布石だ。
「どうなったんだ?」
「……あっけなく死んだよ。あと数ヵ月で、婿になるはずだった」
「……」
事情を知らない彼は当然絶句し、何か告げようとしてやめた。そして、場の雰囲気を変えるために、フォビオの横で軽く体を伸ばす。
「……さてと、ここで昔話を語って悩んでいても仕方がない。あたしがノワールの所に案内しよう」
「本当か?」
「ただし、遊びに付き合ってもらう。名付けて『鬼ごっこ』だ」
「鬼ごっこ? 初めて聞くな」
当然だ。この遊びを知っていれば、ツムギさんと同じ世界から。ヒノモトから来た証拠になる。
「簡単に説明すると、捕まえる役の鬼を指名して、時間制限内に逃げ切った者が勝ちになる。簡単でしょう?」
「そうだな。よし、乗った」
「今回の『鬼』は、提案したあたしが引き受けよう。制限時間は一時間。ある程度距離が離れたら、捕まえに行く。本気で逃げろよ?」
「応!」
「では……、始め!」
軽く走って離れていくフォビオの背中を見つつ、若様に思念伝達を送る。
《若様。今からノワールの身内を、そちらに誘導します。どちらに
《カイジンの家だ》
《再会させるまで、どうかご内密に》
《わかった。居住区へ案内しろ》
《了解》
会話が済む頃、フォビオが米粒に見えるほど距離が開いていた。それを見て舌先で唇を舐める。
手加減はしない。
狙った獲物も逃さない。
それが、ツムギの子孫であるあたしの信念。
「覚悟しろ。フォビオ」
さァ、一緒に遊びましょう。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時