第31話 警告 ページ33
「おはようございます、Aさん。今、時間大丈夫ですか？」
「おはよう、ノワール。大丈夫だよ」
帰国を控えたノワールは、住民用の食堂の道向かいにある店で、リアムとずっと待っていたらしい。
「出国前に、どうしても伝えたくて早起きしました」
「？」
当の二人は視線を見合わせ、気まずい雰囲気を
「アイツ、と言っても解らないか。父の子孫の事なんだ」
「へェ。それは目の
「……。灰色狼で、魔王カリオン様の護衛をして、姉上と接触する機会を伺ってる。たぶん、大きな祭りに合わせて魔都に来るかもしれない」
それからは、誰も何も言葉をかけない。否。かけられない。
『どうか気をつけて』とも『ご武運を』とも軽々しく言わない。
ツムギさんの父の執念深さは、よく心得ている。だからこそ縁が続いている。
「情報提供に感謝する。アニータさんに『元気にやっている』と伝えてくれ」
二人を見送り、食堂に向かった。
「お帰りなさいませ。リムル様」
「おう、ただいま。Aも食べてみるか？」
リムル様の気配を察知し、気分の悪さを隠して離れに行くと、手土産に『シュークリーム』という珍しい菓子を箱に詰めた状態で持参されていた。長机を囲んでいる皆は頬にクリームをつけて、口々に『美味しい』と言っているが、あたしは
「……いただきます」
意外にも薄茶の皮は薄く、中の『カスタードクリーム』の味も判らないがたっぷり入っていて、思いの
「どうだ？」
「美味しいと思います。…すみません」
「そっか」
味覚が判らなくなった日から、仲間達が暇を見つけては、領地の南西にある山岳を越えた先にある海で魚介系を獲ってきてくれる。毎日一食ずつ、ゴブイチ達が試行錯誤しながら出してくれてはいるものの、心因性のためあまり効果が無いように思えた。
「長引くなら、原因の輩を連行したほうが――」
「ソウエイ。兄としての気遣いは感謝するが、そんな提案二度とするな。顔も見たくないんだぞ？」
「…悪かった」
抑えていた殺気が若干漏れ出てしまい、兄が言い淀むほどの怒気で黙らせる。
「御馳走様でした」
一礼して離れを後にしたが、この時、自分の異変に気づいていなかった。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (
レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達！ ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります！ (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです（笑）これも竜胆さんの文才の力ですね！これからも更新頑張ってください！ (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竜胆 | 作成日時：2018年12月1日 1時
