3 insecure ページ3
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「あ、のほんとに私の不注意なので大丈夫です…!」
「いえ俺も悪いんで」
「ほんとに大丈夫ですから!」
「はぁ…でももう買っちゃいましたし」
かれこれこのやり取りをして五分くらいになる
仮にこれがどうでもいいクソみたいなおっさんだったら、
いただきますって颯爽と帰って動画でも見るんだろうけど
私の脳内が言っている。このチャンスを逃してはいけないと
だって、だってすっっっごく似てるんだもん
分身したんですか?って言いたくなるくらい
お兄さんの背丈が、髪色が、なにより特徴的なその声が、
私の大好きで精神安定剤の彼に
「んじゃこれで失礼します」
「ま、ってください、!」
「はい?」
このお兄さんがただのそっくりさんで別人だとしてもいい
もしここであの時声かけておけば良かったって後悔するより全然いい
でも今までの人生逆ナンなんてしたことないし、
興奮と恥ずかしさと罪悪感でひしひしと心が痛む
「あのー、時間ないんでもう行っていいっすか?」
「ぅえ…ぁ…もしよかったら、なんですけど」
「はぁ」
「ケーキのお礼、をですね。いつかさせていただきたいので、その…連絡先、とかおっ、おしえてもらえませんか?」
心臓がばくばくする。鼓動のせいで自分の言葉が聞き取りづらい
ちゃんと、話せてるかな
「お礼とかいらないんで大丈夫です」
「いや、でも、このままじゃ心がいたいっていうか…」
さすがに気持ち悪いかな、断られるかな、
やだよねたまたまぶつかった相手に連絡先聞かれるとか
ビッチかよって思われたかな
「あー…じゃあラインでいいですか?」
「ア゛、はい、ラインで大丈夫です…!」
「んじゃこれ俺のQRなんで読み取ってください」
「あ、ありがとう、ございます」
若干めんどくさそうな仕草のお兄さんに申し訳なさを覚えつつも、
差し出された画面からアカウントを読み取る
表示されたアイコンはなんかよくわからない人?の顔面をドアップにしたものと、
名前にはKの一文字だけ
「気が向いたらでいいんで。それじゃ」
お兄さんはぶっきらぼうに呟いて夜道に姿をくらませた
どうしよう、どうしようどうしよう
光る画面に映るkの文字と先ほどのお兄さんの姿
神様、期待してもいいですか
・
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作者名:@ は に | 作成日時:2020年7月17日 14時