【歌い手】期待して損した。

＊ ページ46

ーーー


『喜ぶ人？……何か、勘違いしてない？』



だって私は今、他人に対して疑心暗鬼で、彼らが私を本当に好きなのか、仲間だと思ってくれているのか、全く分からないから。

長い付き合いなのに、私は彼らの事を信用することができなかった。

本当はわかっているのに……私は最低な奴なんだ。



『これは私の自己満……まず、私が簡単に挫折するとでも思ってる？心外ですね』



私だって簡単に折れる気はさらさらない。

それに、もう気づいてるんだ。

眉を八の字に歪めて「A…………」と呟いたるったんに胸を締め付けられるような感覚がした。大丈夫だよ。だから泣かないで、るったん。



『みんなも、もう気づいてるんじゃない？私の歌みたの伸びが悪くなってるって。古参もどんどん他に目移りして推し変していってるの』



そら「……なにが、言いたいの」



『私の最盛期は終わった。でも今でもトップを走り続けるみんなに、マイナスになるような事はさせられないんだよ。……掲示板でも動きがあったし、今回の炎上はこれだけじゃ終わらないと思う』



まさかこの歌い手ハウスの住所がバレて……いや、あの人の娘さんに晒されて、高額で取引されているだなんて、誰が思うのだろう。いや、そんなの誰も思わない。想像すらしなかった。

どうしてここまで民度が下がったんだ。

分からない。でも、明らかに昔とは違う。いくら何でもマナーが悪すぎる……



『……ここも、もう危ない。数人のリスナーさんに住所がバレているんです』



天月「Aも、気づいてたんだ……Twitterの方でもこのシェアハウスの住所の取引を持ち掛けるツイートがいくつか見つかった。潔く引っ越すのが打開策かな」



もう知ってたんだ……

まさか住所を晒されるとは思っていなかっただろうし、なによりこのシェアハウスに女性歌い手は参加していないことになっている。

くろちゃんと私がここにいることがバレれば、炎上する。写真を撮られれば終わりだ。



(炎上に対するトラウマ、まだ治ってなかったんだなー……)



怖い、その感情しか出てこなかった。

★→←★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す