【歌い手】期待して損した。

＊ ページ30

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午前3時。

この時間帯、今日は誰もリビングに居ない。

いつもなら2時を過ぎるまでは、まふさか辺りがゲームで盛り上がっているのだが、今日は日中の気まずさからか2人共さっさと寝台に入ってしまったので静かなのだ。

私は一睡もすることが出来なくて無睡眠のままぼーっと椅子に座って部屋の一点を眺めていた。身に感じる無力感に重い感覚。身体は疲れた、と訴えてくるのだが眠気が一向に襲ってこないので仕方がない。

……否、明日が来ないで欲しくて寝たくなかったのかもしれない。



『っ？！……ぁ、痛……っ』



突然物理的に痛み出した胸を抑える。

ズキズキとした髄を針で刺されたような痛みにガタン、と椅子を倒してまで蹲った。

なんだこれ、こんなに痛くなることなんて今までなかったのに……



(とにかく、鎮痛剤……！)



リビングにある私のスペースである棚の一角から、白い3mm程の丸い形状をした飲み薬を震える手で取り出した。

その拍子に箱に入っていた薬がひっくり返って全て散乱してしまったが、どうも出来ない。

丸い形状のせいで薬剤が上手く出てこなくて大分苦戦したが、生憎にも水を取りに行く余裕もない。唾液と口の中の水分だけで薬をほぼ無理矢理飲み込んだ。

喉につっかえる感覚だけが残り、数分で胸のチクチクとした痛感は消えていった。


目の前に散らばった薬のゴミが散乱しているけれど今は……

鎮痛剤に含まれた睡眠効果のおかげか、散らばった大量の薬を片付けることなく重たくなった瞼を閉じた。

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