【歌い手】期待して損した。

★ ページ9

軽やかなノックの音も重く感じる。



でも、この部屋の人はシェアハウスの中で一番喋る人だし、信頼してる。



だからこそ、余計に裏切られたくない。




『96ちゃん、ご飯出来たよ…？』


96猫｢は〜い！ 今いく〜！｣




ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ、ﾄﾞﾀｯ となんか部屋の中ですごい音がした後、見慣れた笑顔の96ちゃんが出てきた。


96ちゃんの笑顔は本当に安心する。


今だってほら、お腹の痛みは少し残ってるけどだいぶ安定してきた。


このシェアハウスで精神的に不安定だけどそれなりに暮らせているのも96ちゃんのおかげ。



96ちゃんには感謝してもしきれないね。




まぁ心の中でこんなこと思ってても当の本人は廊下に充満した匂いを嗅いでおいしそー、と呟いているが。


いや、あなた猫なのに犬みたいだね、って突っ込みたいところをグッとこらえる。




96猫｢今日もまふとAが作ったん？｣



『うん、そうだよ。 野菜炒めには気をつけて。』



多分味濃すぎて味覚おかしくなるから。



96猫｢まーた調味料入れすぎたんか？｣


『うん、ドサッと。』



塩何g入ってるんだろうね、あれ。



多分ひとつまみどころじゃないよ。





なんて、雑談しながらリビングへ行く。


リビングに近づくにつれ、再び胃がキリキリしてくる。


もうそろそろ慣れても良い頃なのにね。



そんな私の様子に96ちゃんも気づいたようだ。




96猫｢何回も言うけど、自分一人で溜め込むんじゃないで？

わしにはいつでも頼って良いんやから！｣


『……ありがとう。』






さぁ飯だ飯〜！と叫んでいる96ちゃんの後ろで、私は一人、暗い顔をしていた……。

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