肉壁4 ページ4
「僕、君と暮らしたら健康になりそう」
翌朝、太宰は肉壁に優しい手つきで揺り起こされ、ご機嫌だった。
彼女の作った朝食を食べ終えて食後のコーヒーを啜り、肉壁は何も言わずに、ホッとレモネードを飲みながら、口元を薄く緩ませている。相変わらず、反応が薄い。
彼女の朝食は目玉焼きとトーストで焼いただけの食パンで地味だったが、するすると胃の中に落ちていった。彼女は、褒められても何も言わない。感情を出さないのに加えて、あまり喋らないから、本当に何を考えてるのか分かりづらい。
ポートマフィアの首領の肉壁の位置にあるなら、非常に有能なものなのかもしれないが、森鴎外の肉壁という枠組みから外れたら、とんでもないことになりそうだ。
「私、寝室で着替えますので」
「分かった、入らないよ」
襲おうとは思わないくらい、彼女の身体は貧相だ。ブラジャーだって必要がないくらい、痩せていて女性らしい肉づきもない。
肉壁の年齢も知らない。知っているのは、鴎外のみだ。彼女の情報は、秘匿されている。身体の薄さと幼さがある顔つきから、太宰と同い年なのではないかと考えるが、全てを知ってるのは鴎外である。太宰と肉壁は、そのまま徒歩でポートマフィア本部まで歩いていった。
無言でも、心地のいい無言は良いものだ。気を遣わなくていい肉壁を隣に置くことで、他の部下も何も声をかけてこなかった。肉壁を気にかけるものは、ポートマフィアにはいない。陰気で暗くて、何を考えてるか分からず、常に孤独を着ているような人間には誰も声をかけたがらなかった。
「僕はここで。最上階だろ?」
「はい、ありがとうございます」
そのくせ、目がとても綺麗な色をしているから、興味がないけれど自然と惹きつけられてしまう。太宰は、その瞳とかち合う瞬間が1番好ましい時間だった。肉壁は、太宰に小さく一礼をして、エレベーターに上へ上へと登らされていく。
今日も、彼女はポートマフィアの森鴎外の肉壁として働いていく。
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作者名:0ve3250z1y1176c | 作成日時:2023年2月5日 22時