Cor Leonis et Mare (ページ4)

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1＿舞咲優陽ページ4

豪華絢爛、きらびやか。
そんな言葉が似合う、ブラック家主催のクリスマスパーティーに、たくさんの純血家がやって来ていた。

しかし、そんなキラキラした表面の下には、ドロドロと穢れた嫉妬や憎悪の感情が渦巻いている。

''ブラック''というネームバリューは絶大だ。

ブラック家嫡男は聡かった。
故に、7歳にして悟ってしまったのだ。
''ブラック''に媚び、何か利益を得ようとする気味の悪い純血家の者達の笑みを。

それに吐き気を催しながら、自分も口元に笑みを張り付けていた。

ああ、俺も。
奴らと同じような顔をしているのだろうか。

少年は愕然とした。そして、無意識に隣に目をやる。

隣では、1つ下の弟が、穢れを知らない天真爛漫な笑顔で挨拶を返している。

何家目かも分からない、同じ返答の中で、ふと美しい瑠璃色の目を見た。

｢おはつにおめにかかります。ラピスラズリけのちょうじょ、Aともうします。7つです。｣

まだぎこちない作法でドレスを持ち上げ、頭を下げる彼女。

初めて出会った、金髪の美しい少女に、少年は心を奪われた。

胸が高鳴り、自分以外にも聞こえてしまいそうなほど。

...しかしそれは、少年の弟も同じだった。

少年の弟の頬に朱が差し、弟はサッと目を反らしている。

少年は、この時ばかりは、顔色の変わらない己の顔を恨んだ。

少女もまた、少年の弟を見て、その丸い頬を染めていた。

｢レギュラス。あなた、まさか...｣

少年達の母が言う。

｢A、もしかして...｣

少女の父も言う。

頬を染めた少年と少女は無言で、それが何よりの返答だった。

そこからはトントン拍子でことが進んでいった。
少年の弟と少女は許嫁となり、将来の約束がなされた。

その知らせを聞いたとき、少年は何とも言えない喪失感に襲われた。

少年は知らなかった。
それが｢失恋｣というものだと。

そして、その美しい瑠璃(ラピスラズリ)を手に入れた弟を憎らしく思った。

少年は知らなかった。
それが｢嫉妬｣というものだと。

やがて少年は、家に反発するようになった。

少年は悔しかったのだ。

＿＿初めて知った｢恋｣という感情を持った相手を、弟に奪われたかのように見えたから。