32色目 枯色日和 5 ページ10
「とりあえず、美花を守って。世界が終わる事が一番最悪だから授業も休みなさい。紫苑たちも合流したらしいし。あの方がクロノス内に隠れ家を持っているから、当分は……」
脳内でさっき校長に言われた言葉を幾度も反芻するが、全く飲み込めない。
あのあと話はほぼ校長と穹さんの間で進み、私たちへの反感がそこらじゅうにある学園にいるのは危険。ということで皆で隠居もどきをするらしい。
隠れ家とやらには明日、校長に連れていってもらうという。
その為に今はバラバラに自室へ戻り、各々荷物を纏めていた。
私はとりあえず適当に4日と少しの分の着替えともろもろだけトランクに詰め終えた。残るは手荷物。
「んー、手荷物にはスケッチブックとー、ペンケースとー、あと飴とか?」
ウサギのぬいぐるみに話しかけると、ウサギは座った状態で自分の上を見上げた。
視線の先には、以前ショコちゃん……いや、晶に図書室で借りた“カラフルの書”が置かれていた。
完全に忘れていた。ウサギに礼を言いリュックへ入れると、ウサギは胸を張る。
今朝私と精神を切り離し、ぬいぐるみに繋げたと駆乃から聞いている。
ウサギは構造上話はしないがよく動き、表示もあまり変わっているようには見えないがコロコロて変わるのだ。
駆乃の腕にいたときは逃げようと必死だったが、私が問答無用でバックに詰め入れると逃走不可と察して大人しくなった。
今は綿の詰められた両腕で鉛筆を持ち、紙に向かっている。
『ここは、“俺”の居場所なのに』
駆乃曰く私の中にこのウサギの中の精神がいたときに、そんな言葉を言っていたという。
俺、ということは男? しかも私が“居場所”?
わからないなら聞けば良い。彼には口が無いが、私にはそれを視る力があった。
息を吸い込んで、ウサギと瞳を交わらせる。
黒いビーズが私を捉えた。
「“あなたの願いはなんですか”?」
「!!」
瞳を黄色にして“色視”を発動させた。
ウサギが驚いたのがわかる。
だが、他にめぼしいものは何も見えてこなかった。
諦めて『絶対、カラフルだから』と呟くと私の瞳は赤に戻る。ウサギはそれにも驚いていた
そして一心に紙に何かを書いている。かろうじて読めるレベルの疑問文。
「“想良ソウヨは無事か” “お前は美花か”……?」
真っ直ぐこちらを見つめるウサギに対し、私は呆れ顔で疑問文を返した
「ソウヨって、誰?」
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