32色目 枯色日和 4 ページ9
「ありがとう……とりあえず穹、その画像を消しなさい」
「えー、いつか校長を揺するために保存します」
いつもと変わりないテンションの穹さんと必死の校長の鬼ごっこに、皆の顔が柔くなる。
度々意志表明してはくれていたが、私を“カラフル”だとかそういう理由より“後輩”と言ってくれた事が何より嬉しかった。
駆乃に「良かったじゃん」とぬいぐるみを持つ逆の手で肩を叩かれ、私の顔まで緩んできてしまう。
瑠羽さんは、大丈夫だろうか? 少し、そこだけ心配だった。
彼女は夜中に晶を逃がした責は自分にある。なんて思ってしまう人だ。
少しの間しか居ないが、よくわかる程には話して来たはず。
声を掛けようとした所で、後ろから声を掛けられた。
振り向くと、怜希と宇流ちゃん。
普段通り2人の温度差は大きい。
怜希は軽く手を合わせ、宇流ちゃんは眉を下げてすまなそうに小声だ。
「よっ!! さっきはごめんなー」
「お2人とも、強く握ってしまってすみません。痛くなかったですか?」
どうやら2人は教室から私たちを連れ出す時の腕の強さを謝りに来たらしい。
怜希は魔法で武器になるように、日常生活では度々シュシュ等に形を変えて宇流ちゃんと共にいた。彼も謝ったのは今回もそうしていたのだろう。
痛みなぞ全く無い腕と、頭を振り答えた。
「大丈夫!! ここまで連れてきてくれてありがとね」
「本当に助かった!! ありがと!!」
「良かったー! 珍しく宇流が心配してて……いてっ」
悲鳴は、怜希の足に宇流ちゃんが静かに蹴りを入れたことで飛び出したらしい。
抗議の視線を怜希は向けたが、冷徹な宇流ちゃんの視線がそれを粉砕した
「馬鹿怜希黙って」
「……はい」
塩を掛けられたナメクジのごとく萎れてゆく怜希を尻目に、宇流ちゃんは語りだした。
「教室は……見ましたね? あの惨状」
「教室って……皆“世界滅ぼすー”みたいなのを言ってたやつ?」
駆乃に向かい、頷く宇流ちゃん。
「正解です。晶に直接手を加えられたのはクラスに数名ですが、……人は数有る方、力有る方につきますから。それであの有り様らしいです」
「朝早く行ったらすでにそんなんでさ。部室行ったら状況と“私服で”って置き手紙あったんだよ」
腕を頭の後ろで組み、伸びる怜希。「ま、部室に来なかったのは2人だけで、もしかしたらで案の定」
乾いた笑いで凌ぐしかなく、私と駆乃は困り顔で笑った。
普段あまり笑った所を見ない宇流ちゃんも笑っていた
11人がお気に入り
「ファンタジー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ