32色目 枯色日和 ページ6
｢おぉ、美花たちは登校したんだ｣
｢穹さんたち……私服…まさか……サボ……にぎゃっ｣
言い終わらない内に頭に穹さんの手刀が刺さる。痛い。
先ほど宇流ちゃんに半ば引き摺られるように連れて来られたのは校長室。
その間もすれ違う先生や他の人たちは私たちを避けるように道を空けていた。
転入するという話以来、来たことは無かったし、だだっ広いその部屋には校長と、保護部の私と駆乃以外のメンバーが私服でいた。
皆深刻そうな面持ちで腕を組んだりしながら俯いている。
状況を嫌でも察知した私は頭を擦りながら黙ったが、空気読めない駆乃はあっけらかんとして聞きにでた。
｢さっき教室行ったら私たちの部活は“世界を滅ぼす”って言われたんですけど、それ蒼李の事ですよね？ なんで私たちが悪いように広まって……｣
｢あー、駆乃。今から話す。話すから｣
言葉を遮られ、駆乃はむっとする。動くウサギのぬいぐるみを絞めながら彼女は穹さんに話を譲った
｢……どういう事ですか？｣
訝しげな顔の駆乃と私に彼女は座るよう言ってから語りだした。
｢昨日の夜、瑠羽に聞いたけど“落下音”が聞こえたらしいね。
そこでソラさんに会ったり美花がどーのは後で。
駆乃が去った後も、瑠羽はその音の原因を調べようと１人歩いてた。そしたら……｣
妙な溜め方をしながら、穹さんはちらりと瑠羽さんの顔色を伺った。
顔面蒼白、という言葉がぴったり合ってしまうほど何かに怯えていた。
サエさんはしきりに背中を擦っているが良くなる気配は無い。
｢瑠羽は夜の寮で見つけた。……晶が部屋に押し入り、“この部活は世界を滅ぼす”という記憶を生徒に入れていた現場を｣
｢晶が、ですか？｣
言ってから考えが追い付いた。確か晶は“紫のカラフル”。その能力“空拡”は無いものを在るとする能力。記憶を変えることも可能だ。
駆乃は唾を飛ばす勢いで前のめる。
｢え、晶は今!?｣
｢逃げたよ。勿論、瑠羽は立ち向かった。でも相手が悪い。……瑠羽が怯えた隙に晶は逃げたんだ。瑠羽が人形人形恐怖症なのは知ってるね？ ……晶は人形だったらしい｣
苦悶の表情を浮かべる瑠羽さんに掛ける言葉が見つからず、右手が空をさ迷った。
ずっと私の後ろで話を聞いていた宇流ちゃんが控えめに手を上げた
｢晶が言ってた“プレゼント”はこれですかね？ だとしたらもうこの学園に私たちの居場所はもう……｣
それに対し、穹さんは苦しげに口角を上げた
｢この状況、ヤバい｣
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