41色目 変態色の同胞 2 ページ47
「蒼李さん」
子珀は宇流が意識を失ったところを確認してから蒼李に声をかけた。
少しだけ声が上ずった。
「これで、“本当の”緑のカラフルは救われるよね。逸那にぃの魂はクレアシオンに使われないんだよね?」
子珀の目的は、兄である“緑のカラフル”の“言無逸那”の魂をクレアシオンに参加させない事。
なんやかんや100年近く蒼李とは一緒にいて、何度もクレアシオンについて聞いた。
“クレアシオンは、発動時に酷い辛さを伴う”。そう聞いて、子珀はいてもたってもいられなかった。
姉である茜は刀の“紅桜”に入ってしまった。
元々両親はいなかった子珀は姉と兄に執着していて、姉も兄も亡き今、彼女は兄の“魂”に執着している。
「案ずるな。これで、逸那の魂は使わずに済む」
「なら私、もう抜けるね。私がここにいる必要なんて無いし」
「あぁ」
子珀は頷き、蒼李の横を通りすぎる。そして、晶の袖を掴んだ。
「ねぇ、晶はどうするの?」
「…………」
「ね、逸那にぃは助かった。だからさ、一緒に……」
「ダメ」
晶は同じ言葉を静かに繰り返す。わかってはいたが、子珀は泣きそうになって晶にすがった。
「茜ねぇは死んで、逸那にぃはいなくって、でもきっと死んでて。あと私の家族は晶だけなの。私ずっと“あそこ”にいるから。何かあったら来て」
「うん、わかった」
晶の腕の中から、くぐもった子珀の声を聞きながら蒼李はふと、鮮やかな赤から青と黄に目の色を変えた友を思い出す。
考えるだけでぞくぞくしてくる。
あぁ、想良。俺はもう、戻らない。
クレアシオンの材料は揃った。あとはお前とあの貧弱な"美花"を捕らえるだけ......
ふと、研究所の真ん中にそびえる時計台を見上げた。
時計は、3月の後半の日を示している。カラーイーザが溢れるまでの期間だ。
あと、1ヵ月もしない内に世界は"カラーイーザ"が溢れて滅びる。タイムリミットまで、あと僅かだ。
「じゃあ、バイバイね」
子珀は晶から名残惜しそうに離れると、着物の襟を弄る。左前、と呼ばれるその襟は死者用の着方だ。
桜に掻き消されるように消えた子珀を見ながら蒼李はふとそんな事を考えた。
本来なら蒼李も晶も子珀も生きているはずが無い。100年以上生き続けたが、晶と子珀はレプリカに入り、他人の心を糧に生きて、蒼李は“永遠の魔法”で生き長らえてきた。
つまりここにいる3人は死んだも当然。ここから世界を救う為に死んだって変わりない。
蒼李は1人自嘲した。
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