41色目 変態色の同胞 ページ46
朦朧とする意識、何かを管で注入されている太もも、拘束された手足に、疼く瞳。
それらに耐えながら、宇流は目の前の蒼李を睨み付けた。
穹さんたちを逃がすために囮になったことに後悔は無い。
だが、穹たちが逃げた直後、蒼李らは皆を追わず宇流だけを捕獲した。
連れてこられた研究所らしき場所は、ヒヤリと冷たい。
なぜ私を捕獲したのか。それだけ、解せない。
「……まさかお前が残るとはな、願ったり叶ったりだ」
「何のこと?」
こいつらに敬語など使いたくない、何時もより乱暴に聞く。
すると蒼李は宇流の顎を持ち上げ、瞳を見つめた。
宇流の水色の瞳に、蒼李の青の瞳だけが映る。彼は卑しく笑った。
「今までは基本“美花”目的だった。だが今回は違った。本当の狙いは、“緑のカラフルの代わりになれる者”」
「カラフルの代わり? 一体」
「カラフルは魂が純色の5つの魂。それらが全て集まれば“クレアシオン”が発動し、願いが叶う。
だが、どうしても緑のカラフルだけ見つからない。
そこで俺は考えた。緑のカラフルを、作ってしまえば良いと。
それが10年前の話だ。
……覚えはないか?」
宇流は素直に首を振る。
でも、何か私は知っている。そんな漠然としたものが頭の中にあった。
「10年前、幾人かの魔力能力の長けた子供が親に売られ、研究材料とされた。
その中でたった1人、“緑のカラフル”の欠片を身体に埋め込まれても拒否反応を起こさないものがいた」
蒼李は驚きを隠せない様子の宇流に「聡明なのは変わらずだ」と微笑み、耳元で囁いた。
「それが、“藤井宇流”。今回の目標だ」
「私が……。知らない、私はそんなもの」
「そうだろうな、なにせお前は緑のカラフルの能力“時縮”を使いこなし、自身の辛い記憶だけ消したのだから」
顎をそのまま弾かれ、宇流は音をたてながら床に滑りこんだ。
上から見下すように宇流を見る蒼李。
私は、私はこの光景を知っている
見下す蒼李。息絶えた美花。色を失った穹さん響輝さん、怜希。涙を流す想良さんに、頭を下げた逸那さん。
全て、思い出した。
謝る口が止まらない。それを見て蒼李は満足そうに笑い、宇流の頭に手を置いた。
「今から、お前に嫌な記憶を繋げる。全ての記憶を、消すが良い」
「嫌だっ!! 私は、美花を守る。そう“約束した”!!」
蒼李は「知らん」とだけ言い、記憶を宇流に流し込む。
声にならない断末魔をあげる宇流の瞳は緑に変わった。
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