願いの愛し子と緑の剣【ソラリア学園魔法科】 (ページ41)

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39色目　孤軍奮闘性濃藍症候群 4 ページ41

想良と逸那は、学園都市クロノス……つまり旧空中都市マグナの中で唯一原型を保っていた“始まりの庭”を拠点とし、陰ながらソラリア学園の生徒を見守った。

美花は、このまま幼女の姿の自分が母なんて、しかも父親もいないなんぞいけないと、拾って貰えるよう生命維持カプセルに入れたまま山へ置いた。

断腸の思いだったが、こうしないといけない気がした。

想良は、現代日本を隅まで歩き、素質や暴走の危険性のある子供をソラリア学園に“特殊入学”させる権限を持っていた。

その年、入れたのは２人。

高校つき中学科に“月影希離(後の朱音穹)”と“音岳響輝”。

過去にひと悶着あった２人。だが、彼らは真っ直ぐ育ち、高校２年となる。

穹と響輝が高２の夏、いつものように想良と逸那が生徒らを隠れて見守っていると、ある小さな異変に気付く。

学園内に、小さな、歪み。

見覚えはあると思った。だが、最後に見たのが100年近く前にとなると、思い出すのも容易ではなかった。

きっとそれが、判断を遅らせたのだ。

逸那は歪みを見た、そして小さな“蝶”に気付く。

｢あれ、あの蝶は晶の……｣

｢は!? ちょっと待て｣

想良は黄色い自身の片目へ精神を集中させ、能力“色視”を使役する。

元は両目赤色だったが、“色変”を使い、黄色と青のオッドアイにしていた。

理由は簡単、これで常に“色視”と“繋樹”が使えるから。

色視は遠くの物を透視するなど、“見る”“知る”の類いは大体できる。想良は歪みから２つの人影が出たのを見た。

｢……紫苑｣

｢は？紫苑？｣

｢蒼李の研究所にいた、紫苑だ!! きっとあの歪みは晶のゲート。ならあそこに行けば蒼李に……!!｣

紫苑は美花と共に生命維持装置に入れられていた少女。まさかここで会えるとは。

想良はすぐ紫苑を追った。２人は明らかに魔法科校舎へ向かっている。

何だろう、編入したい。とかだろうか。蒼李や晶は元気だろうか。

勝手に高鳴る胸を抑え、曲がり角を曲がる。

その時鼻先を掠めた臭いは、まだ覚えている。

鉄が、錆びたような臭い。

生徒たちは血を流し倒れ、校舎は半壊。見るに耐えない惨状が、そこにはあった。

｢穹っ!!｣

誰がの叫びが聞こえた。振り向くと、特殊入学した“音岳響輝”がいた。

視線の先には、紫苑ともう１人仲間らしき少女。２人はそれぞれ何かを抱えていた。

……美花と、朱音穹。

咄嗟に飛出した逸那。だが紫苑らはそれに気付かぬまま、歪みの中へ姿を消した。