31色目 真夜中のモーヴ 4 ページ5
「えぇ!? 私寝てる間にそんなことあったの!? しかもウサギが動くようになるとか……」
「本当怖かった!! 師匠は先輩たちの言ってる“ソラさん”と同一人物だったし……さっ」
駆乃はショートカットの為に植木を飛び越える。私も慌ててそれに続いた。
実はさっき駆乃を起こした時には目覚ましはとっくに鳴り終えていて、私たちは食堂に朝ごはんも食べに行けぬまま用意だけして寮を出た。
それから駆乃の先導で学校へ向かいながら昨日の夜の話をしている。
まさか昨日の夜、ソーラと会っている間にそんなことがあったなんて。
信じられない、とでも言って話をそらせたら良いのだが、駆乃が終始絞めている動くウサギのぬいぐるみが「真実だ」と物語っている。
ウサギはずっと駆乃から逃れようとしているが彼女の腕力はそれを許さなかった。
朝部屋にいたのは夜中の「ベッドから落ちる人続出」事件で私が巻き込まれないようにの対策だったらしい。
とりあえず言えるのは、駆乃がとても良い人だと言うこと。
ギリギリ予鈴がなる前に教室まで着いた。
いつもは部室によって点呼のようなものに参加するがそんなことして授業に遅れるわけにはいかなかった。
スライディングで入室。幸い先生は来てないようだがいつもと違い教室は静まりかえっていた。
……いや違う。私たちが来た瞬間に急に静まったのだ。
そして私たちを凝視する皆。
「えーと、おはよう?」
反応は無い。駆乃と2人首を傾げたところでうちのクラスのドン、新屋ちゃんが不意に私の前に仁王立ちした。
「ねぇ、よく来れるよね」
「え、何かあった?」
ドスの聞いた声に驚きながら問うと、まわりから小さな笑い声と呆れ声と怒りの声。身に覚えはなかった。
「とぼけないで!! 知ってるの!! あんたらの部活は“世界を滅ぼす”って!!」
息が、一瞬止まった。
体が固まった私に対して、駆乃は身を乗り出す
「嘘!! 私たちはそんなこと……!!」
「だって最近変な事多いじゃん。いきなり変なの来たり」
「それは蒼李たちで、私たちはそれを倒して…!!」
駆乃が必死に否定するが、クラスはよってたかって私たちが「世界を滅ぼす部活」と言う。
怜希の席を一瞥するが、彼も宇流ちゃんもいない。...だれも、助けてくれない。
その時、固くなっていた私の腕と激昂しはじめた駆乃の手を誰かが引いた。
「美花!! こっち!!」
「宇流ちゃん!!」
私服姿の宇流ちゃんだった。彼女は暴言の絶えない教室に踵を返し私たちの手を引いた
11人がお気に入り
「ファンタジー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ