38色目 花の中の百緑 6 ページ37
「世界が、滅びる……?」
いつになくマジな顔で言うから、笑いしか出てこなかった。
「何を言ってっ……るんだ……っ」
「本当だ。頼みがいくつかあるんだ。“美花を絶対死なせないで欲しい”、“カラフルの事を纏めた書物を作って欲しい”、“俺が死んでもレプリカには入れないで欲しい”、“逸那と晶を頼む”
……まぁこれくらいか」
陸哉は言い終えるとあることに気づき、想良を優しく抱き留めた。
漏らさぬよう押し殺すように泣く想良を、あやすように撫でる。
「ごめん想良。ごめん、ごめん、ごめん」
想良の押し殺した泣き声が大声に変わる。
陸哉はその日、1人で早坂家へ行き、想良に言ったとおり早坂家全員の能力を“色視”に似た能力にした。
付き添って言った蒼李は「最後、美花を宜しくって……」と涙ながらに彼の最後を想良に伝えた。
長い間、ただ何も考えられずに想良は泣きじゃくった。
元々“永遠の魔法”で命が不安定だった想良はショックやらなんやらで一気にバランスを崩し、幼女の姿でずっと成長出来なくなってしまった。
長い間、想良は1人自室に籠っていた。ソラリア学校は想良を“偉大なる魔法使い”として讃えた石碑を作り、想良を実質亡きものとしたため、学校の仕事もない。
そんな、ある日。子珀が想良の自室に飛び込んだ。
彼女が息も絶え絶えに要件を伝えると、想良は蒼李の研究所へ走った。
「蒼李!!」
「想良……美花がっ、美花がっ」
水滴をぽろぽろと床に落としながらも蒼李は機器の操作を続けていた。
その機器に繋がっているのは……
「美花……」
「あのね、間違えて新入りの子が点検でロープを外してしまって……!!」
泣きそうな顔で説明してくれた晶に対し、想良は晶の言いたい“最悪の事態”を想像した。
美花が、死ぬ。
「助ける方法は!?」
「それが、何も……」
「くそっ」
想良は怒りを怒号として吐き出した。
そして、“彼”のことを思い出す。
「“大丈夫、絶対カラフルだから”」
晶が怪訝な顔をした。
想良はそんなことは気にせず研究所を見回し、ある一点を指差す。
円柱状の生命維持装置のなかにそれは浮かんでいた。
「……“陸哉さんの、特別製レプリカ”」
「これに美花を入れてくれ」
「え!? でもこれは陸哉さんの」
「陸哉の願いなんだ!!」
頼む。そのすがるような声に晶は折れ、レプリカ作成に必要な“繋樹”の為に蒼李を呼んだ。
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