31色目 真夜中のモーヴ 3 ページ4
「……んぁ?」
目を擦り伸びをする。
ふわふわとした感覚と、目の前の幼女で判断した。
……これは、夢か。
眉をハの字に下げた幼女、ソーラが首を傾げた。
「美花、良かった。何か気持ち悪かったりしないか? 駆乃も瑠羽も心配していた」
何があったのか、さっぱりわからない。でも気持ち悪くなどないから素直に首を振った。
安堵するソーラ。
彼女は青と黄色のオッドアイを潤ませて私の手を自身の小さな手で握る。
強く、強く。痛いって思うほどに。
「美花、聞いてくれ」
「……なに? ソーラ」
「私は最低だ。最悪だ」
「そんなこと無いよ。いつも悪夢を見たりすると助けてくれるでしょう?」
「助けられてない!! 1度も!!」
いきなりの大声。びっくりして彼女の顔を見た。
少しすまなそうにしてから、ソーラはまた言葉を綴る。
「私は、何度も君を助けられなかった。何度も何度も何度も。……前回も」
何言っているの? 意味を教えて?
そんなことを聞けないほど、ソーラは切羽詰まっていたし、いまにも精神が崩壊してしまうかと不安になる顔だった。
私の手に、小さなメモが捻りこまれる。空色で、開けてみれば学園の地図で端に小さな赤丸と文が書かれている。
今度は聞けた。
「これは?」
「晶は知ってるな? もしかしたらもう学園に君らの居場所は無いかもしれない。だからその時は皆を連れてここに来るんだ。何でもある。良いな?」
頷く、しか選択肢がなかった。
「“今回”は君らにも全て話さなければならないと思ってな。……君にも選択を行って貰おうと思う」
「選択?」
「そうだ。蒼李は“クレアシオン”を使おうとして毎回失敗する。そして、世界が滅びる」
そこで風が吹いた。
名残惜しそうに、彼女は私の頬を撫でる。
憂うようなその表情は、ソーラの幼女の見た目でするものではない。
「美花、……………」
白くなって遠のいていくソーラ。
「待って、聞き取れない…………ソーラ!!」
バサッ
目を覚ますと私はベッドの中だった。
勢いよく起き上がったからか布団が音をたてて床へ落ちた。
「……ソーラ、何て言ったんだろ」
何故だか見覚えと聞き覚えのある言葉だったような。でも思い出せない。
あきらめて用意をしようと伸びる。
ふと、赤が目に入った。布団の下。
さっき落とした布団を持ち上げると、そこにはキツくウサギのぬいぐるみを抱いた駆乃がいた。
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