37色目 鳩羽のルーン 3 ページ29
男はそのまま片膝を地へつけると、顔を下へ下げた。
「主様、ご無事で」
「あ、ハヤナ!! うわーでかっ」
和気あいあいとした会話が陸哉と「ハヤナ」という男の間で行われてる。
話を聞くかぎり、ハヤナは陸哉がここに来るまでの従者。
昔の姓が魔法名家のトップである“早坂”だったし納得がいく。
じゃあその隣の子は?
銀髪の少女は想良の視線に気づくとハヤナの後ろへ隠れてしまった。
「ハヤナくん、怖い……」
……こっちもだよ!!
想良は叫びそうになるのをぐっと堪えた。こっちはずっと3人だけで、それ以外の人と会って来なかった。恐怖値はこちらが上。確実に。
銀髪と想良が互いに震えながら見つめあう。
談笑にも見つめ合いにも参加しなかった蒼李が、もう一人分の影に気づいた。
その影は、蒼李に気づくと笑い、前へ踏み出る。
その人は、綺麗な女性だった。金髪に紅の瞳で、服も見るだけで“高貴”とわかった。耳には4つ花弁の小さな花の耳飾りが橙色に輝いている。
女性は、硬直する蒼李相手に微笑んでみせた。
「君が、“蒼李くん”だね?」
「っ……はい」
そのとき、想良は蒼李の敵意に満ちた顔を初めて見た。
いつも蒼李は温和で、想良と陸哉は度々喧嘩もしたが毎回仲裁してくれるような奴。
蒼李の敵意に怯むこともなく、女性はしゃがみこみ、手を差し出した。
「私は、“マグナ国王”、“街辺瑠奈”だ」
「街辺……瑠奈!?」
言いながら想良は陸哉を見た。蒼李も目を見開いている。
街辺瑠奈。本で読んだ。この空中都市“マグナ”を生んだ魔法使いの神、“マグナ”の友人であり、マグナの死後は王としてマグナを纏めてきた才女。
「陸哉、お前知ってたな?」
「うん、だって見えるもん。
で、瑠奈さんは“カラフルが全員集まった”。“外の世界へ出ないかな?”。“研究を、もっと広い世界でやって欲しい”……ってとこ?」
「あははっ、正解。流石“早坂陸哉くん”。色視はすごいな」
「いや俺、“小岩泉”なんで。小さな岩の泉で」
「そうか、それは失礼したね」
瑠奈さんが言いたかった事は、全て陸哉が先に言ったことらしく、彼女は伺いをたてるように「どうだろう?」と鎌首をもたげた。
勿論、私たちは二つ返事で承諾した。
ずっとここで3人。調べたいことも調べられることもすぐ尽きてしまうだろう。
幸い、外の世界で古い文献はあまり流通していないから、その知識を持った私らは重宝された。
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