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36色目 落ちて、空五部子 2 ページ24

水色の髪の幼女が目を覚ましたとき、彼女はひどく驚愕した。

目を閉じる前にいた枯れ木だけの森ではない。

むしろそれの正反対な豊かな草木の生い茂る場所に寝かされていたからだった。

意識を失う前、男が“金”だのなんだのを言っていたことを加味すれば、幼女が誘拐されたことは明確だった。

よく見ると洞窟のような窪みの中らしい。岩肌が壁となり、上を見上げれば円上に空いた岩の隙間から雲が流れているのが見えた。

「き、れいだなぁ……」

ずっと食い物はないものかと下ばかり見てきたからか、空がとても美しく見えた。

ずっと欲していた筈の水が泉にナミナミと湧いているのにも気づかず、ただただ呆然と空をみつめてどのくらいたっただろうか。

幼女の耳を、彼女と同年代らしき高い声が掠める。

聞くかぎり2人ほど。幼女は軽く逃げる姿勢をとり、声の方向へ叫ぶ

「おい!!」

幼女の怒鳴りに、声の元は焦るように言い合いを始めた。

「どうするの? 君が挨拶しよって……」

「俺無理!!」

「ならやらないでよぉ、僕もあんな子に話しかけるなんて……」

「“あんな子”って、私のことか?」


「わぁっ!!」

声の主のところまで出向くと、彼等は軽く尻餅をつく。

推測どおり、5〜7歳ほどの2人組。

1人は短い茶髪に黄色い瞳を持っていて、しきりに「水色だ」「赤だ」と幼女を見て歓喜した。

一方もう片方は長い黒髪に青い瞳で、優しげな垂れ目をずっと潤ませて震えていた。

……なんだこいつら?

それが、彼等に対する第一印象だった。

「……こんにちは!!」

「…………」

「俺、陸哉!! お前は?」

「…………」

「髪なっげーな。な、どっから来たんだ?」

「…………」

「おい無視かよ!!」

眉を吊り上げた黄色い瞳に対し、赤目は眉間に皺を寄せる。

「うるさい。耳障りだ」

「なにおぅ!? 俺は“剣一一族”の最上位、“五色”にも敬われる“早坂家”の子息だぞ!!」

その名字と名前には覚えがあった。

確か、この一族間の抗争が堪えない中で力と富と民と伝統を兼ね備えて勝ち進む一族。

それの子息なんて、もし私と同じ誘拐なら今頃騒ぎになっている事だろう。

というか、そんなのと私が何故同じ場所におかれているんだ?

幼女の中で廻って行く疑問。

それに答えたのは、疑問の原因とも言えるやつだった。


「俺は一族に引き渡されただけだから、そんな騒ぎになってないと思うぞ!!」

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設定タグ:ソラリア学園 , オリジナル , ファンタジー   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:宇流 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2016年4月1日 13時

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