35色目 青天の霹靂 ページ19
墓の主のソラさんは死んでいないらしいが、軽く墓石に手を合わせて、立ち上がる。
荷物から救急箱を取り出して慣れた手つきで穹さんの怪我の処置を始めた響輝さんの隣へ移動した。
駆乃はまだ探索戻ってきて無いのでここが一番心地好い。
「あの、ここなら蒼李も見つけれないと思うんですけど、どうします? ソラさんや紫苑さんたちとの合流」
消毒薬を真顔で受ける穹さんがあっけらかんと答える
「それは問題無いと思うよ。ソラさんの墓石があったでしょ?
この“始まりの庭”はソラさんの陣地みたいなものだから来ると思う」
「そう……なんですか?」
「いやぁ、ここは思い付かなかった。美花はここをよく知ってたね」
「それは……」
疑いのない微笑に、多少の罪悪感と困惑。
夢の中の人、なんて信じてもらえないだろう。
ならどうする? 本当の事を話さない?
……出来るならこの人たちには本当を言いたい。
理由はどうであれ守って来てくれたんだから
固く閉ざすようにしていた口を開く。
だが、声を出そうとしたところで誰かの声がそれを遮った。
「おーい、美花ー!! 穹さーん!! ほら師匠、早く!!」
声の主は駆乃だった。彼女は満面の笑みでこちらに手を大きく振っている。
どうやら彼女は自身の“師匠”……つまり穹さんたちの言う“ソラさん”を見つけて連れてきたようだが、なんとタイミングが悪い。
せっかく決心ついたのに、と不貞腐れそうになる。
そんな事は露知らず、駆乃は自身の影に隠れた“師匠”とやらを引っ張り出す。
近くをまわっていた瑠羽さんたちが小さく声を漏らしていくなか、1人絶句した。
うそ、まさか。え、マジで?
「ほら、早く」
「まて、駆乃。私は……」
「いいんです、美花。この人が私の師匠でソラさんだよ」
駆乃に背中を押され、前に出たのは、水色の長い髪のふわふわお下げ。白いリボンに水色と白のドレスワンピ。そして青と黄色の瞳の幼女。
「うそ……まさか駆乃の“師匠”と“ソラさん”が…………」
やっと出た言葉。幼女の後ろから、幼女に顔付きのよく似た黒髪緑目の女性と紫苑さん照薙さんが駆けてきた。
幼女はそれに目もくれず、こちらに向かい微笑みかける。
「やっと会えた……!! 私の、愛し子」
「“ソーラ”。まさか本当にいるなんて……」
目の前の“ソーラ”は夢の中でよくやるように、私の頭を掻き抱いた。
私より小さな体は、暖かった。
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