34色目 杜若の夢荒らし 2 ページ16
「……!! 斬!!」
後ろからの声と私の間を駆乃の斬が隔てる。
振り向くと、子珀が大量の桜の花びらを従えて立っていた。
その隣には蒼李もいる。
駆乃と瑠羽さんたちは私を庇うようにして蒼李たちと対峙した。
前とは比べ物にならないほど皆強くなった。サエさんや瑠羽さんらは過去を乗り越えたし、真白くんには“神”の力を解放して貰ってている。
だから、負けない。そんな油断はそのとき、確かにあったと思う。
だからこそ、“あんな選択”をしてしまったんだ。
「さぁ、カラフルを渡せ」
毅然と言い、手をこちらがわに差し伸べる蒼李。
青と緑の継ぎ接ぎのフードから覗く瞳は深くも浅くもない、純色の青。
宇流ちゃんが怜希を構えて私の前に立つ。
穹さんは晶との応戦でぼろぼろの状態で戻ってきた。どうやら引き分けらしい。あっちにもぼろぼろの状態が1人戻っていった。
響輝さんに支えて貰いながら穹さんが蒼李を睨んだ。
「前にも言った、美花は渡さない」
「美花じゃない。“緑のカラフル”の“レプリカ”だよ」
“緑のカラフル”……? しかも“レプリカ”?
穹さんは首を傾げてから「私たちは、知らない」とだけ答えた。
蒼李は返答に対してクスクスと肩を震わせる。
「お前たちはまだ知らされていないようだな。まぁ良い。寄越さないのなら力づくで……」
蒼李の青い瞳が、揺らぐ。彼が伸ばした手から現れた無数の青い鳥が私たちを囲むように舞い始める。
「穹さん!!」
焦りの滲んだ声で宇流ちゃんが叫ぶ
「どうします? 蒼李たちも倒すんですか?」
「悔しいけど無理だね……荷物がすぐ近くに置いてある。
それを持って蒼李が来ない所に逃げるのが得策だ。
私が時間を作るから逃げて」
吐き捨てるように言ってのけながら、彼女はまだふらつく足で立ち上がった。
顔面蒼白で、ほとんど気力で立っているような状態。
自作という回復薬に顔をしかめながら、らしくもないこんな言葉を、穹さんは口にした
「……晶は強い」
「……は?」
響輝さんは目を丸くした。
「ちょっと待ってくれ。短期決戦なら穹は群を抜いてる。その穹が、強いって? 勝ち目はないんじゃ……」
「勝ち目は無くても時間は稼げる。後は逃げる場所かな?問題は」
「だからお前が残る必要は……!!」
2人が言い争いを起こすなか、青い鳥の囲みはどんどん私たちを締めるように狭まっていった。
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