33色目 パペット・バーミリオン 3 ページ13
「後は二年。サエはほら、あそこで水色の剣を持ってるの。で、あそこに......」
いきなり止まった説明に、駆乃も私も疑問を隠せなかった。
穹さんの視線の先を辿ると、そこには棒立ちしている瑠羽さん。
「瑠羽っ」
「瑠羽さんっ!!」
「何してんの、美花!! 」
いてもたってもいられない。私は咄嗟に飛び出した。同時に穹さんもスタートをきる
後ろから駆乃の牽制の声がするが。これを無視した。
穹さんに必死で戦いの中を着いていく。
そしてたどりついた穹さんは放心状態の瑠羽さんの肩を揺すった。
「何してんの。死ぬよ!?」
必死で訴えかける穹さんに、瑠羽さんは頭を横に振った。
「私さ、怖いんだ。自分の作ったぬいぐるみが、モノが、関係が、人が壊れるのが。だからさ」
くぐもった声と濡れる瞳。顔を上げた彼女は泣いていた
「死んでも良いかなぁって」
その言葉。辛い、苦しいを越えて悩んだ結果だということが頭の悪い私にも分かる。
突如、ケルベロスもどきがこちらへ吠えたが、瑠羽さんは怯えてなどいなかった。
「私は、皆みたいに強くない。平気で人をあやめる奴よ。闘うのは自分じゃなくてぬいぐるみなのに調子に乗って。こんな最悪な女」
要らないよね
最後の言葉は振り返りざまに放たれ、口パクでしかない。
でも、凄く、響く。
弱いし、自分では闘えない。私と同じ。
それでも1人で闘ってきた。
その彼女は、もうケルベロスもどきの前で、手を伸ばしていた。
「さぁ、殺すなら殺しなさい。覚悟はできてるの。さぁ!」
そいつは口角をあげるとその口を大きく開け、瑠羽さんを飲み込まんとする。
が、それは一筋の光によって憚れた。
その光は弧を描き、怪物の口を怪物自身の血で紅く染めあげる。
「ま、間に合ったぁ」
駆乃は、肩で息をしながら銃の形にした手をまだもう片方の手で押さえていた。
斬だ。彼女は斬を飛ばしたのだ。
ケルベロスは傷を負った箇所を抑え苦悶の表情を浮かべている。
「美花!」
突然の呼び掛けに驚くと、駆乃は声を張り上げる
「魔物は私らがどうにか惹き付けるから、瑠羽先輩を!」
遠くからでも見える様に大きく頷き、瑠羽さんに駆け寄る。
「何がしたかったんですか?」
「......」
「死にそうだったんですよ!」
下を向いたまま瑠羽さんは口を動かす
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