33色目 パペット・バーミリオン ページ11
朝。結局リク(ウサギのぬいぐるみがそう名乗った)の言っていた“ソウヨ”の正体は掴めぬまま眠りについた。
時計を見て、一瞬学校の用意をしなければと焦ったがすぐ布団の中へもどる。
私たちは学校に行くんじゃない。“ソラさん”の所に行くのだ。
校長が連れていってくれる時間までまだ寝れる。
微睡みへ、れっつだーいぶ
……何時もなら、そこで夢へ落ちることが出来ていた。
だが何故か眠気はやって来ず、仕方なく私服に着替えをして、荷物の確認をして。
やることが無くなって、久しぶりにスケッチブックに向かう。
なんだろう。ここ数ヶ月ずっと「守る」だので1人な時間が無かったからいやに新鮮な気がする。
魔法科に入る前の美術科の時はずっと1人だったり、嫌がらせを受けたり、訳のわからない授業を聞いたり。
昔と比べて今がどれだけ恵まれて、彩りを纏っているのかが頭の中で思い返される。
「何か“色変”を発動しちゃって、
駆乃に会って、
入部して、
佳代と戦って、
蒼李たちに狙われて、
サエさんの弟の話を聞いて、
響輝さんたちがカップルコンテストで優勝して、
トモちゃん……私の育ての親に会って、
エリとミツキちゃんの最期をみて、
真白くんと真黒くんすごくて、
ショコちゃんが実は“紫のカラフル”で……思い返すと色々すごいな。世界は4月にカラーイーザが原因で終わる宣告も受けたしなぁ
…………よし」
絵のラフに、我ながら良くできた気がした。
赤を基調とした、少女が持つには大きい武器。彼女は喜んでくれるだろうか?
時計を見るとまだ時間まで2時間はある。
もう何枚か描けるか……?
鼻歌交じりにまっさらなページを捲る。
その時、何の前触れも無く地が響くように振動した。
地震、という訳ではないようだ。
荷物を持ち、手提げにリクを詰めて部屋を飛び出す。
そして、校庭が見える位置に来たとき、私は唖然と立ち竦んだ。
優に5mは超す大きな怪物。容姿は神話のケルベロスのような三つ首の狼。
「なに……これ」
呆然とする私の後ろから、ぼそぼそと声が聞こえた
「保護部? 何、あれも?」
嘲笑う声。それの言っていた“あれ”って?
疑問に思い、ケルベロスの下を見る。そこには保護部メンバー全員集合していた。
気づいたら、私は手提げだけ持ってそこへ駆けていた。
前線にでても大丈夫、絶対カラフルだから
強く心の中で唱えた
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