31色目 真夜中のモーヴ ページ2
草木も眠る、丑三つ時。
駆乃は1人部屋の隅に置いてあったパソコンを慣れない手つきで操作している。
エリとミツキが目の前で死んだ。その感じがまだ頭に残っていて、寝ようにも寝られない。
そんな時間に起きているのは初めてだった。
開いているのはゲームではない。真黒と見て、これなら、と思った。
“魔法使いデータベース”
それには昔から今までの魔法使い、能力などが掲載されているため、産みの親をしらない美花の何かしらの助けになると思ったのだ。
「んー、片っ端から似てる人探したけど、見つからないか……。次、名字で検索……」
1人呟き、“こいわいずみ”と平仮名で入力して変換した。
ヒットは、無い。
「打つ手無しー?」
不貞腐れながらも、今度は読み仮名検索で“おいわい”と入れた。
また、ヒットはない。
だが今回は“備考に発見いたしました”と文が出てきた。
クリックして開こうとしたとき。
隣の部屋から聞こえた大きな落下音に肩を震わせた。
同時に鳴るノック。
こんな夜分に誰だろうとドアを開ければ、そこには水色のお下げがトレードマークの幼女でありながら我が師匠が立っていた。
咄嗟に「師匠!!」と叫びかけて止めた。こんな夜に迷惑だ。
小声でしゃがみながら「師匠、」ともう一度
「こんな夜に何がありました?」
「美花がおかしい。少し手伝ってくれ」
「美花が?」
師匠は私が上着に袖を通す間も落ち着かない様子だった。
また上から落下音。
だがそんなの目もくれず美花の部屋へ。
そこにはネグリジェで辺りをしきりに見渡す瑠羽さんの姿があった。
彼女はこちらに気づくなり、師匠に指差し叫んだ
「そ、ソラさん!? なんでこ……」
「瑠羽、話は後だ静かにしないか」
気圧され、無言で頷く瑠羽さんを一瞥し、師匠は聞いた
「……で、君はどうしてここへ?」
「あの、ぬいぐるみの補修を遅くまでしてたらいろんな部屋から誰かが落ちたような音が聞こえて。
美花ちゃん死んだらいけないって言われてるから様子見に」
言いながら掲げたのはピンクと赤の布地で作られたウサギのぬいぐるみ。彼女はぬいぐるみを操るから護身用だろう。
師匠が、控え目に美花の部屋のドアをノックした。
少しずつ近づく足跡。
ドアの向こうから出てきたのは、いつもと変わらない眉を下げた美花だった。
だが、少し違和感を感じる。
彼女は、私たちの顔を一通り見て、師匠を見つけた。
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