154話 金と銀の力 ページ8
｢おい、この状況はおかしくないか？｣
ナルトを先頭に木から木へと飛び移るサクラやカカシに、チヨ様。それを、横目で見ながら同じく移動中のAが口を開いた
｢おかしいも何も、上忍が加わることに損は無いと思うけど？｣
ムッと口を尖らしたAに、カカシは苦笑い。別件で砂隠れに来ていたといえ、今は風影のピンチ。当然の事ながら、Aの本来の任務である伝承やらなんやらを、みな落ち着いて聞けるわけはなかった。
｢…っ、だからって敵の縄張りに突っ込むこの班じゃ無くても、国境警備でも良かっただろ？｣
ふと、国境警備を任されたテマリを思い浮かべながら言葉を発せれば｢お前ねェ…｣と、カカシが呆れる。仮にも上忍。任務に駄々こねるような年齢でもないだろうに
つい先日までのナルトを思い出したカカシは、少しだけ口元を緩め、｢ま、期待してるよ｣と先を突き進むナルトを追いかけた。
｢あ、おい…！｣
話を途中で上手く流した後輩に手を伸ばしても、その手は空を掴むだけ。少しだけ心にモヤッとした何かを抱えていると｢お主…｣と横からチヨバア様の声が聞こえた。
｢その耳飾りをどこで手に入れたのじゃ…っ｣
少しだけ目を見開いて
上ずった声を上げたチヨ様に｢えと…｣と記憶を遡る。
一見どこにでも売ってそうな、金属で出来たイヤリング。特別な一族の紋章が入っているわけでも無く、右耳につけたのは金色、左耳につけたのは銀色と、左右で色が違うのにデザインが同じなのでペアルックなのだろうか。
特に誰からもらった。
どこで手にいれたのか、覚えがなかったAは｢記憶にはないんですよね｣と微笑んだ。
特別なものであったとしても
自分にはその想いは分からない。
けれど、知り得ようとすれば医学の進んだ今、理論上は可能だ。それでも彼が記憶を辿ろうとしないのは…
｢怖いのか。己の過去を知るのが｣
｢…。｣
｢震えているぞ…お主の身体が精神に呼応してな｣
風で木の葉がユラユラと揺れる。
巻き上げられる砂埃に紛れて、小さなA
の声が響いた。
｢知ってしまえば、きっと俺は今の俺ではなくなる。…そんな気がしてならないんです｣
今の自分が変わる。
それは予想できない事で。
想像出来ないもので。
俺を幾度も震わす。
そんな俺の精神をしってか知らずか
チヨバア様が何かを放り投げてきた
｢…っ！｣
｢お主の存在を表すものじゃ。それをどうするかは、持ち主次第じゃがな…｣
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作者名：ヨウ★(・^・) | 作成日時：2018年1月21日 14時
