15杯目 ページ15
「寂しいじゃん?ほずみちゃんいないと」
すると、ほずみちゃんは顔を赤くして、
「そんな、変わらないと思いますけど」
と否定した。
「変わるよ。……ほずみちゃんは大切な陸上部のひとりなんだから」
気が付いたらほずみちゃんの姿を探していた自分を思い浮かべて返事をした。
「……ありがとうございます」
「いーえ!」
嬉しさが隠しきれていないほずみちゃんを見て、俺も嬉しくなった。
会話が一区切りついたところで、二人で作業を始めた。
*
「そういえば、ほずみちゃんって名前じゃ無かったんだね」
「え?」
作業を開始していきなり振られた話がこれで、頭が混乱した。
「ほずみってめちゃくちゃ下の名前だと思ってた。小夏が下の名前で呼んでるの聞いて、誰?ってなって聞いて知った」
「確かに、ぽいですけど……ふふ、初対面の先輩にいきなり下の名前だけ名乗らないですって」
だからずっと、"八朔ちゃん"で呼んでいたのかな。今までされたことない誤解にツボっていると、
「……Aちゃん」
と、急に名前を呼ばれてドキリとした。
「俺も、呼んでいい?」
「……ハイッ」
あまりにも動揺して、その二文字すら力が入ってしまった。
「はは、良い返事」
「な、慣れないからびっくりしちゃって……」
「Aちゃ〜ん」
「からかってますね?!」
めいちゃん先輩はニヤニヤしながら名前を呼んで、私の反応を見て楽しそうに笑った。……こっちは気が気じゃないのに。
私も本名を呼んでみようかと思ったが、そんな勇気は出なかった。
*
下校時刻になると、もう外は真っ暗だった。二人で話しながら進めたこともあって、時の進みは早く、鶴はかなりの量になっていた。
「帰ろっか」
そう言って先に立ち上がった先輩の背中を追いかける。その背中が大きくて、体格差にドキドキした。さり気なく車道側を歩いてくれた優しさにも、胸がときめく。
「ごめんちょっとコンビニ寄っていい?すぐ戻るから」
「はい、分かりました」
……本当にすぐ戻ってきた先輩が手に持っていたのは二本のオレンジジュースだった。
「今日お疲れ様ってことで。スイーツとかにしようと思ったけど、好み知らなかったから」
……私の好みに合わせようとしてくれた事実だけで十分すぎるのに、好きなものを覚えて選んでくれるなんて。
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあお疲れ様、乾杯!」
そう言って二本のボトルをぶつけ、先輩への気持ちで熱くなった体を冷ますように、ジュースを流し込んだ。
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を。(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» 今回もお付き合いありがとうございました!感想とても嬉しいです;;新作全然思いついてないのでいつになるか分かりませんがまたそのときはよろしくお願いします!! (8月17日 10時) (レス) id: 8f27bf5dbb (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結お疲れ様でした!ドキドキワクワクキュンキュンするような話で、食い入るように見てました!もし新作があれば絶対読ませていただきます!素敵な作品をありがとうございました! (8月16日 6時) (レス) @page41 id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
を。(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» 今回もコメントありがとうございます!またお付き合いいただけたら嬉しいです!! (2023年3月30日 18時) (レス) id: 8f27bf5dbb (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 新作おめでとうございます!とても待っておりました!!!この作品も楽しませていただきます!!!!! (2023年3月30日 8時) (レス) @page2 id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:を。 | 作成日時:2023年3月30日 8時