黄昏オレンジジュース【meychan】

16杯目 ページ16

めいちゃん先輩へ募る想いを自覚し始めてから間もなくして体育祭がやってきた。生活に慣れたばかりの体が次の行事に向けて頑張って疲れているのを感じつつも、私の学校は行事に気合いが入っているため楽しみが勝っていた。体育祭も派手なもので、クラス別ダンスでは衣装も割と自由に出来るらしい。とは言いつつ予算は決まっているため、一部のダンスができるメインの子達が派手な衣装を着て、他の子達はクラスTシャツをアレンジして着こなしている形が多いようだ。先輩のクラスは何をするんだろう。先輩は何か衣装を着るのかな、と期待を胸にその時間を待った。

――そして、先輩のクラスの時間となる。
すると、先輩とその仲間たちと見られる人達がみんなで厳つい体に似合わぬ魔法少女の格好をして出てきた。ザワつく会場、特に同学年らしき人達や同じ部活の人達は笑いが止まらないようだった。かく言う私も体格と服装のアンバランスさに吹き出してしまった。おジャ魔女なんとやらのカーニバルをBGMに、踊り出す。中々演出が凝っていて、最終的にその日の話題もダンスの部の優勝も先輩のクラスが持って行った。元々楽しい学校だとは思っていたが、楽しい人達が先輩のクラスには集まっているのかもしれない。

その後、お昼休憩の時間に先輩の姿を見かけた。声をかけるか迷っていると、先輩とばちりと目が合った。気まずくて逸らそうとしたとき、先輩がニコリと笑うから目が離せなくなってしまった。勇気を出して先輩の方へ駆け寄る。
「もう魔法解けちゃったんですか？」
魔法少女の姿から着替えた先輩の姿を見て言うと先輩は苦笑いしながら、
「……クラスダンス、見てたの？」
と言った。
「あれだけザワついてましたから」
嘘、話題になっていなかったとしても先輩のことは見ていた。
「うわぁ恥ずかしい、見ないで欲しかった」
「なんでですか？楽しく良かったですよ」
「……どうせならかっこいいところ見て欲しいじゃん」
その言葉に心臓がキュッとなって、何も言えなくなってしまった。
「午後はリレーあるから、かっこいいとこ見ててね！」
「っ、分かりました、焼き付けておきます！」
……リレーじゃなくても、いっぱいかっこいいところ見てるのに。
そんな言葉が言えるはずもなく、喉の奥で突っかかる。もっと素直になりたいのに。もう少しこの気持ちと、自分自身に胸を張れたら変わるのだろうか。

17杯目→←15杯目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す