…第拾仇幕… ページ22
「昨晩、京の巡回中に浮浪の浪士同士の斬り合いに遭遇、相手が此方にも敵意を見せたため、斬り合いとなりました。隊士らは浪士を無力化しましたが、その場にいたもう一人の人物によって斬り殺されています。その折、彼らが『失敗』した様子を目撃されたようです。」
巡回中に遭遇、相手が敵意を見せた。
詳細な事柄が伏せられているのは、部外者であり、処遇に悩んでいる私の前で話してはまずい事だから…なのだろうか。しかしこの話のまま行くと、私は新撰組と浪士の斬り合いを”たまたま”目撃した通りすがりとも取れる言い方の様に思える…。
それに、昨日の”謎の人”については一切語られていない。ただその人物について私が知っているかどうかも怪しいわけだから、そうそう口には出せないという事なのだろうか…？
「………」
どう発言するべきかを思案したまま、ただ押し黙ってしまう。
彼ら、いや、処遇に困っていた斎藤さんと土方さんはもしかすると事実と違う事を私に言わせたいのかもしれない。
それが嘘つきを順当に処罰するためなのか、見られてしまったとはいえ一般人を無闇に殺したくは無いという情なのかは見当がつかないが…。
「なぁ、お前どこまで見たんだ？」
藤堂さんが身を乗り出して私に問いかけた。
「どこまでと言われても。…さっき斎藤さんが言った以上の事は…」
「ほう。何も見ていない、と？」
考えのまとまらないままそう口に出すと、土方さんの冷たい声が降ってかかった。
まずい、反応を間違えたろうか？
「でも…あれ？総司の話では、お前が隊士どもを助けてくれたって話だったが……」
顎に手を当ててううんと唸ると、永倉さんは沖田さんに視線を向ける。
しかし視線の先で沖田さんは口元に右手をやって感情の読めない笑顔を貼り付けたまま何も言わなかった。
「一度、状況を整理して見ましょうか。」
見かねた山南さんが混乱する永倉さんと藤堂さんを制し、私の見た事を一から話すように促した。
真意は読めないままだが、下手に嘘を付くのは良くないだろう。
助けてもらった手前”謎の人”について話すのは少し気が引けたが、それを隠すとどうしても説明がつかないため、全てを順序だてて正直に話す事にした。
「…まず、持っている小太刀を寄越せと浪士たちに追いかけられて…それで、そこに新撰組の人たちが来て…謎の白髪の人に、助けられて…」
順序立ててとは言っても、どう話したものかとどもりながら昨晩の出来事を並べて行く。
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。 - 文才がすごいですね！引き込まれるような作品で、今まで見たことのない、新しいトリップものかなーと思いました。とても面白かったので、次の更新を楽しみにしています。 (2017年4月14日 16時) (
レス) id: f3711a96f0 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 不思議な作品に釘付けでした！続きが気になります！更新頑張ってくださいね(*￣▽￣)ノ~~ ♪ (2016年10月5日 8時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 帝 | 作成日時：2013年6月1日 23時
