44.忘れ物 ページ46
何時も通りの時間に出社し、中に入ろうとドアノブに手を掛ける……
すると私が動かすよりも先にドアが動いた。
中から、つばの大きな白の帽子を被った女性がでてきた。
ふっと微笑むその様子は、可憐だがどこか掴みどころのない女性だという印象を受ける。
然し、依頼人であろう女性に其のような事は失礼だろうと頭を振り、その考えを無くした。
探偵社に入ってからだろうか?
何となく、違和感を覚えることが多くなった。
女性とすれ違いざまに入れば、見送りを行なっていた敦君と目が合う。
「その子、かわいいですね!」
視線の先は__私の頭にだらんとぶら下がった黒猫。
金色の眼の、成猫になりかけの様な猫だった。
「迷い猫ですか?それとも野良とか!」
目を輝かせて嬉々とした声をあげる敦君に反応して、鏡花ちゃんも此方に近よってくる。
撫でてみたい、という顔だ。
「この子は私の仔ですよ」
「Aさん、猫飼ってたんですね!」
「いえ、飼っては無いです」
2人がキョトンとした顔になる。
薬と笑って手を鏡花ちゃんの方へ向ければ、猫は器用に頭から下り手先に坐った。
今度は驚いた顔になる。
つい笑ってしまったが、無理もなかった。
幼女が成猫を指先だけで支えるなど、到底無理だからだ。
「実は、この猫異能生命体なんです」
「ええ?!」
敦君と鏡花ちゃんが、物珍しそうに撫でたり観察したりしている。
異能生命体など、それ程珍しいのだろうか?
「凄い……本物みたい」
「此の仔って、意思とかもってるんですか?」
頭を撫で喉を鳴らすのを見ていた敦君が聞く。
まぁ、異能生命体だからね。
「一応あるよ。ただ、『こうなれ』って命令すれば必ず応えてくれるし、寧ろ声に出さなくても心の中で念じれば通じる。」
「へぇ……便利だなぁ。
Aさんはすぐに異能を使いこなせていて、凄いですね!」
和気あいあいとして話していると、国木田さんが慌てた様子で歩いてきた。
その手には、少し不可思議なものが握られていた。
「おい、此れは先刻の依頼者のものでは無いか!?」
その手には、小さな白いコンパクトが握られていた。
……コンパクト?
「応接室に落ちていたのだ。
すまないが、誰か届けてくれないか?」
敦君が青い顔であわあわとしている。
きっと依頼の書類整理などがまだ残っているのだろう。
「私、届けますよ」
それに、先刻の違和感も確かめたいし。
425人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月城捺樹(プロフ) - 紅夏さん» 有難う御座います!更新させていただきました! (2018年5月14日 16時) (レス) id: b10180abe7 (このIDを非表示/違反報告)
紅夏(プロフ) - 面白かったです!これからも更新頑張ってください! (2018年5月1日 23時) (レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
月城捺樹(プロフ) - 1つ1つ返せなくてすみません!沢山の方から期待して頂いてとても嬉しいです。遅くなりましたが更新させていただきました。 (2018年2月24日 21時) (レス) id: b10180abe7 (このIDを非表示/違反報告)
みっく - とても面白いです!応援してます、更新期待してます (2018年2月21日 18時) (レス) id: c025c89ca4 (このIDを非表示/違反報告)
蛍原(プロフ) - このような内容の作品大好きです! 次の話を期待して待機してます(●´ω`●) (2018年2月19日 23時) (レス) id: 5ee87af96c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月城捺樹 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年10月14日 18時