置いてかないでお嬢様！ (ページ18)

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悪役とお嬢様ページ18

前を歩くお嬢様

無言で歩き続けるお嬢様の顔は見えない

次にお嬢様が足を止めたのは

屋上

ベンチに座り、お嬢様は私を見上げる

「ごめんなさい。怖がらせてしまったわね。
　Aを傷付けるつもりはなかったのよ、」

『お嬢様...』

珍しく見せる弱々しい顔

いつもぱっちりと開かれた瞳は

長い睫毛が影を作っている

「でも、あの場面はさっきみたいに言わないと駄目だったの、
　だから、ごめんなさ」

『お嬢様。Aはわかっています』

謝罪の言葉と共に溢れ出してしまいそうな涙

私はしゃがみこみ、

お嬢様の頬に片手を当てる

顔を少しあげたお嬢様と視線が合う

『お嬢様は決して他人を故意的に貶めるような方ではありません。
　それは、このAが保証いたします』

「A...」

お嬢様は優しい

優しいが故に、この役は辛いことの連続なのだ

冷たい態度をとり、罵詈雑言を浴びせ、周囲から嫌われる

その過程でどれ程の人が傷付くかは

目に見えてわかる。

でも、

仲良くしたいと言う気持ちを抑えつけ

言いたくもない言葉を吐き

周囲から冷たい視線で見られる

そんなお嬢様の苦悩と心の傷を誰が理解できるのか。

何度も辞めたいと思っただろう。

何度も挫けそうになっただろう。

私にはわからない。

何故お嬢様が悪役に執着しているのか

『Aはなにも出来ません。
　でも、お嬢様のそばに必ずいます。
　どうか、無理はなさらないで...』

私の手袋越しに、
お嬢様が手を握る

「慰めてくれてありがとう。A」

ー「A、あっちに行きましょ！」ー

幼少のお嬢様の声と重なる

お嬢様は微笑んだ後、昼食を鞄の中からだす

「一緒に食べましょ？」と言うお嬢様に

私は、笑顔でうなずいた

「それにしても、
　Aが一人称を自分の名にしたのは
　久し振りだったわね」

『う、うるさいですよお嬢様！！』

「ふふ、そんなに照れないの」