陌拾伍 ページ22
次の瞬間、彼は消えた。
そして少し離れた場所に現れたかと思うと、また姿を消す。
初めてこの技を見た者は、きっと驚くだろう。だが私はその原理を知っていた。
動きに大幅な緩急をつけ、敵を撹乱する技。私の天火明ノ舞と殆ど同じだ。
だからといって容易く反応出来る訳ではない。それなら私が出来る最善策は一つ。
「ごめんなさい、私も少し本気を出すね。」
全解放・暉の呼吸
捉えた。
風を切り裂く、鋭い音が響き渡った。
呆然として、少年は彼女を見上げた。
刀はあらぬ方へ吹き飛び、地面に突き刺さる音がした。両手は拘束され、動くことが出来ない。
何が起こったのか全く分からなかった。
朧を発動したまま、彼女に一撃を加えようと接近したその瞬間、目が合った。
そして次に目を開けたときには、地面に転がされていた。
瞬きで瞼を閉じる瞬間、彼女の真っ白なリボンが大きく揺れ、風を切り裂く、いや風を纏ったような音がして呆気なく刀を弾き飛ばされた。
「……すごい。」
絞り出しても、そんな言葉しか出てこない。
「さて、時透君に問題です。君とあまり変わらない身長、筋肉量の私に負けたのは何故でしょう。」
少女は彼に乗ったまま問い掛ける。退く気は無いらしい。
「……技を、見切られた。」
「はい、その通り。簡単にまとめると経験不足だね。」
漸く降りてくれた。手を差し出され、躊躇しながらもその手を取れば、想像以上に強い力で引き上げてくれる。
「疾さも技術も申し分ない。けれども君はまだまだ成長出来る。他の隊員と手合わせするのも良い経験になるよ。」
私もそれで力を付ける事が出来たからね、と悪戯っぽく舌を出しなが少女は笑う。
「それと、この刀。見えないけれども少し刃毀れしているね。時間に余裕が出来たら刀鍛冶の里に行ってみるのはどうかな。」
それじゃあこれでお開きにしようか、少女はそう笑ってその場を後にしようとする。だがその羽織を掴み、止まらせた。
「待って下さい。」
「どうかしたの?」
「もう少しだけ、僕に付き合ってくれませんか。」
柱である己が指導してもらえるなんて経験は皆無だ。この機会を、逃したくなかった。
「…良いよ。私も今日は余裕がある。けれども流石に次は木刀でしようか。怪我したら元もこもないし。」
「はい、お願いします!」
それから日が暮れるまで、刀と刀がぶつかり合う音は響いていた。
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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時