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陌拾貳 ページ19

満開の八重桜が、晴れ上がった青空を背景に、時折、花びらを散らせてくる。


「綺麗…」


その時、目の前を黒い影がとてつもないスピードで過った。


「ピィギャア!!」


見事に激突し、衝撃で木が揺れる。


「…梓月(しづき)、大丈夫? 今鶏が首を絞められたような声が聞こえたけれども。」


私の鴉は、桜の花弁にまみれながら顔を出す。


「俺ハ鶏ジャネェ、ベテラン鴉ダ。」


「うん、勿論知ってるよ。それで、こんなに急いで来たってことはお館様から何か届いたの?」


「ホラ、コレダヨ。」


彼は器用に嘴で首にくくりつけられた竹筒から手紙を取り出し私の肩に止まる。それを受け取り、広げて読み上げた。


「近くに霞柱がいる筈なので、時間に余裕があれば手合わせして指導してやって欲しい、か。霞柱って、時透君の事だよね。」


「アァ、アノイケ好カナイ睫毛ガラス自慢ノ小僧カ。ドウスル、行クカドウカハ オ前ニ任セルゾ。」


「うーん、わざわざお館様が手紙を送ってまで指導して欲しいって頼むという事は何か理由がある筈なんだよね。」


「…ソレハ例ノ日ノ呼吸ノ使イ手ノ子孫ダッテイウコト以外ニ何カ理由ガアルッテ事カァ?」


「まぁ、彼と接触すれば私の記憶も戻るかもしれないし。行ってみる価値はあると思うよ。」


「ソンジャ、気ハ乗ラネェガ取リ敢エズ行クカァ!」


鴉を肩に伸せたまま走り出す。途中落ちそうになり必死に風圧に耐える鴉の顔が面白くて、笑いながら駆ける内に目的地に到着した。


其処は、今まで見た中でも一番大きな藤の家だった。


挨拶をして門を潜れば、家主らしき男が走りながら出てくる。


「鬼狩り様でございましょうか!!」


よく見ればその男はびっしょりと汗をかき 顔を青ざめさせていて、とても焦っているようだった。


「はい、どうなされましたか?」


「え、ええと、その、貴方様の階級は…?」


「柱です。まさか、隊員同士で争いでも起こりましたか?」


「は、はいっ、そうなんです、お願いします。私に着いてきて下さい!!」


必死に走る男を追いかけ庭に入ると、其処には地面に倒れ伏す複数の隊員がいた。


全員が白目を剥いて気を失っている。手に握られた刀をみるに、どうやら返り討ちにあったらしい。


「ほんと、君達弱いね。…よく鬼殺隊に入れたな。」


その中心に、長い髪を靡かせて、ぼんやりとした青い目を細めた、幼さの残る少年が立っていた。

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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時

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