陌漆 ページ14
まな板の上にトントンと包丁を落とす。
鍋に油と大根を入れ、砂糖や味醂を入れて軽く混ぜ合わせてから火にかける。
二分ほど炒り煮してから、水を加え、味を見ながら少しずつ
暫くすると食欲がそそられる香りが辺りに漂ってくる。自然と顔が綻び、鮭を捌こうと包丁を手にしたその時、
「先生、ただ今帰りました。」
がらりと扉が開かれ、懐かしい声が響いた。
ゆっくりと振り返り、満面の笑みで迎える。
「お帰りなさい、義勇。」
その瞬間、彼はピシリと固まった。
「……義勇?」
目を点にしたまま、動かない。
「義勇、大丈夫?」
包丁を置いて、左手でペチペチと頬を叩けば、はっとして よろよろと後ずさった。
「Aが見える…俺は疲れているのか。いや、まさかこれは新手の血鬼術か?」
「本人だよ。ほら、分かるでしょう?」
自信満々に両手を広げれば、恐る恐る彼は抱き付いてきた。そのまま彼は肩に顔を乗せ、小さく息を吐く。
「間違いない、Aの匂いだ。」
「やっと分かったか、お馬鹿さん。」
こつんと額を当てて、じっと相手を見つめる。
やがて笑いが込み上げてきて、お互いに笑い始めた。
「変わらないね、義勇。」
「お前は変わったな。(訳:益々綺麗になったな。)」
「えぇ、そうかな。外見はあまり変わってないと思うけれども。」
「いや、随分変わった。(訳:綺麗になりすぎて吃驚している。)」
「そう言われると…義勇は少し老けた?」
「心外!!」
「ふふっ、冗談だよ。相変わらず義勇は格好いいままだから安心して。」
「…二人共、仲が良いのは構わんが、大根を煮詰め過ぎると不味いんではないか?」
「あ"、作っている途中だった!!」
ほかほかと湯気が上がるそれに、目をキラキラと輝かせながら箸を伸ばす。
大根を丁寧に切り分けてゆっくりと口に運び、その瞬間破顔した。
「何時見ても義勇が食べる姿は飽きないねぇ。」
笑顔で食べ続ける義勇を見ながら、自分も口に運ぶ。じっくり味の染み込んだほくほくの大根と鮭の相性は抜群で堪らない。
「こうして三人で食卓を囲むのも久々だな。」
「本当にあの頃に帰ってきたみたいですね。」
「……お代わりはあるか?」
「勿論あるよ。今日は義勇の為に作ったから、お腹一杯食べてね。」
新しく注いでやりながら 笑顔でそう返せば、彼は子供の様に純粋な笑みを浮かべた。
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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時