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陸拾捌 ページ22

「師範、寒いですね。」


悴む手に息を吹きかけながら、同じく隣で震える青年に答える。


「えぇ、そうね。今日はあの家に泊めて貰いましょう。」


日が暮れ、暫く歩いた頃に見えてきた、山の麓にぽつりと浮かぶ一つの明かりを指差した。


「本当にこの時期は辛いですね。早く帰って師範の温かい料理が食べたいです」


「えぇ、帰ったら鍋にしましょう。鬼も寒い筈なのに、どうしてこんな辺境地に隠れ住むのかしらね。」


降り積もった雪を踏みしめて歩く。そして刀に手をかけた。


「空翠。」


「はい、師範。」


「分かったわね。はい、状況確認を手短に。」


「殺されたのは三人。匂いからしてまだ殺されて間もないです。中にいる鬼は二体。どちらも強いです。」


「正解。よし、気を引き締めて行くわよ。」


刀に手をかけたまま、走り出す。何時もなら敢えて空翠に任せるが今回は鬼の格が違う。最悪どちらも死ぬだろう。


それでも私達は鬼殺隊だ。黙って見過ごす訳にはいかない。


…中にいる鬼達は私達の存在に気付いているだろう。それでもここまで接近して何の反応もみせないのは、単に侮っているだけか、それとも己の強さに相当自信があるのか。


恐らく、後者だ。


玄関の扉近くに身を寄せ、空翠に合図を送る。彼が頷いた瞬間、扉を斬り刻んで中に侵入した。


「おやおやおや、良い女じゃあないかい。是非ともその肉を味わってみたいな。」


一人は黒髪を一部白く染め、黒と白の横縞の服を着た、異様な気配を持つ鬼。その瞳には、文字が刻まれている。


(つごもり)。お前は何をしに来たのか忘れたのか?」


そしてもう一人は、異国の服を身に纏った、紅梅色の瞳を持つ鬼。


どちらも今まで戦ったどの鬼よりも確実に強い。次元が違う。刀を持つ手にじわりと汗が滲む。


其処で違和感に気付いた。


この、笑みを浮かべる紅梅色の瞳の鬼。何処かで、会った事がある…?


「お前は、誰だ?」


鬼は、ニヤリと口角を上げた。


「お前の事はよく知っているぞ、暉峻A。」


「何故私の名を!」


「私はお前達の事をよく知っている。」


…まさか。


嫌な予感が冷たく背中を流れる。




「お前達は、


いやお前(・・)は、まさか!!」




母が遺した手紙に記されていた。十数年前、ある目的の為に一族を襲った者達の正体。虧鬼を率いて奇襲をかけた、その者の名は、


『私達の刃は必ずお前を滅する!』


「鬼舞辻無惨!!」

陸拾玖→←陸拾漆



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山梨 - 素晴らしい作品をいつもありがとうございます! 続きを楽しみに待っています! (2019年8月26日 23時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 分かりました。ありがとうございます! (2019年8月2日 17時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 零さん» 有り難う御座います。基本原作通りですが、どんどん活躍させていくので、これからも宜しくお願いします。 (2019年8月1日 0時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - すみません、作者様の漢字の読み方がわかりません。ひらがなで教えていただくとありがたいです。 (2019年7月31日 22時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
- 主人公の活躍が楽しみです。 (2019年7月30日 14時) (レス) id: 6ffd920b45 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年7月27日 16時

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