什參 ページ15
どんなに人を喰らった鬼で有っても、相手が油断すれば一瞬で勝負が着く。
この鬼は今まで出会った鬼の中でも相当強いだろう。でも今は関係無い。
今 鬼は煉獄さんに突然腕を斬り落とされ、動揺している。だから、
その隙に、斬り込むだけ。
全集中・暉の呼吸
それは祭具を両手で握り、円を描くようにぐるりと振るう舞い。
「がっ、」
血鬼術が発動される前に、刀を抜き その頸を斬り落とした。
「い、嫌だぁ!」
死にたくない、そう叫びながら鬼はのたうち回るが 体の崩壊は止められない。やがて完全に消えてしまった。
手を合わせ、祈る。
…どんなに人を喰ってきたとしても、元は私達と同じ人間。
だからこそ 堕ちても可笑しくは無い道だ。それを決して忘れないように、鬼を斬った後は何時も祈っていた。
そして今夜は もう一つする事がある。
「煉獄さん。少し時間を頂いても宜しいですか?」
彼が頷いたのを確認して、園の中心に向かう。
羽織を脱ぎ、刀も地面に置く。
装束も、幣も、必要ない。
ただ、祈る為に舞うだけ。
心
願わくば彼等を 導き給へ
高く歌いながら、天に舞う。
この地で亡くなった人々の魂が、天国へと無事届く事を願って。
やがて舞いは終わり、最後にもう一度祈りを捧げ 彼の元に戻る。
「時間をかけてしまいすみません。でも祈らないと どうしても落ち着かないんです。」
「時間の事は気にしなくて良い。…ただ、とても綺麗で正直驚いた。」
「母から教えて貰った神楽なので、そう言って頂けると とても嬉しいです。」
…まだ母が生きていた頃、母の舞う姿に憧れ、毎日の猛稽古に必死になって食らい付いた。
舞う事は好きだった。それを言うと何時も母に羨ましがられていたのを よく覚えている。
「それにしても、何も特別なものが無くとも、本物以上に舞う事が出来るのだな!」
「本物の舞手は、思いさえ有れば事足りる。…それが母の教えです。」
勿論神に捧げる舞いは別ですが、と笑ってみせれば、
「ふむ、今夜は良いものを見ることが出来た!」
満足げに彼は頷き 私の頭を優しく撫でた。
「よし、何か奢ろう!」
「それじゃあ、宇治金時が良いです。小倉餡たっぷりで。」
「君は本当に甘味が好きだな!」
二人でまだ眠らない夜の街を歩く。次第に夜は更けていった。
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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時