幸せ if ページ41
「綺麗だなァ。」
花火が鮮やかに夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら 時間をかけて消える。
「うん。綺麗だね。」
貸切りにした屋台船で 酒を酌み交わしながら、無数の火花が夜を灯し海に落ちていくのをじっと見ていた。
「それにしても、休みが取れて良かったね。」
奴が持ってきた豆大福をつまみに頬張る。ふっくらとして塩味の効いた赤えんどう豆。そして餅と餡が口の中で蕩け、頬が緩む。
相変わらず、良い趣味をしているなぁ。
ふと奴の左頬に走る傷が目に入り、手を滑らせた。
「この傷、私を庇って…。」
「お前の所為じゃねェ。気にすんな。」
「でも、」
「あの日、お前が抱え込んで 俺達に相談していなければ、お前は今この世に居なかったかもしれねェ。その代償と思えば安いもんだ。」
「…有り難う。」
本当に、君って奴は…。
「実弥には、お世話になってばかりだ。何か、お礼がしたい。」
すると待っていましたと言わんばかりに 奴はにやりと口の端を上げる。
「それじゃア、あの日の約束 守って貰おうじゃねェか。」
「え"」
「忘れたとは言わせねェぞ。」
「あぁ、え、ええと…」
それは、猗窩座と戦う直前の事。
森に身を潜める鬼殺隊員達の緊張が高まる中、奴は此方に体を寄せてきた。
「…もしかして、緊張している?」
無言を貫く奴に、優しく微笑みかける。
「私と相性が良い
「…そう言う事じゃねェ。」
真剣な眼差しで此方を見つめられ、思わずごくりと唾をのむ。
「約束して欲しい。この戦いを、生き残れたら___」
「結婚してくれ、A。」
あの、いとおしそうな表情。
「実弥、聞いて欲しいの。」
ぐっと拳を握りしめ、奴を見つめた。
「貴方と約束したから、じゃないの。」
奴が、目を見開く。
「貴方の思いを知って、沢山考えて、そして分かったの。私も、貴方が好き。」
その瞬間抱きしめられ、耳元で 奴が囁く。
「嫌、って言っても もう離さねェぞ。」
「うん。幸せにしてね。」
空がその日一番の花火に彩られた瞬間、
そっと唇を重ね合わせた。
「A、本当に俺で良いのか?」
「何を今更。…君だから、良いんだよ。」
手を、奴の背中に回す。
「…でも 初めてだから、優しくしてね。」
もう一度、唇を重ね合わせた。
103人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀`)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす!!あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい!! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:酸漿 | 作成日時:2018年9月30日 22時