検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:24,396 hit

ページ5

メラは半分泣きながらそれを拾い集め、一つ一つ袋に詰め始めた。少年や取り巻きはついでとばかりに踞った彼女を軽く蹴飛ばし、満足げに鼻を鳴らす。


「お前の父さんや母さんも可哀想だな。杖の材料を扱う店なのに、娘が出来損ないじゃ説得力が無い。

──いっそ何か魔力の強いものでも食わせて貰ったらどうだ?魔法が使えるかもしれない」


余計なお世話よ、と言い放つメラの声は震えで上ずっていた。


いじめっ子が怖いのでは無い。体が震えるほどの怒りと憎悪が彼女を支配していたのに、それを表す術を持って居なかったのだ。


───魔法が使えなくても幸せなんて嘘。不幸じゃ無いなんて嘘。私にも魔法が使えれば良いのに。いや、いっそあんたが私みたいになってみれば良いんだ。私は魔法が使えて、魔法が使えなくなったお前らをナメクジに変えて踏みつける。ああ、どれだけ幸せだろう!


思考がどれだけ幸福な妄想に沈んでも、事実今ナメクジみたいに地面に這っているのはメラの方だった。


少年達もいよいよメラが泣きそうになっているのを見て面倒臭くなったのか、そのまま次の遊び場へと踵を返す。


惨めだった。いっそどうしても魔法が使えないのなら、マグルの家に産まれてれば良かったのにとも思った。


魔法なんて知らないまま生きて、死んで。そうならこんな劣等感まみれの気持ちに成ることはなかったのに!


最後の干し肉を刺すように冷たい白の中から引っ張り出して、コートの裾でそれを拭って袋に詰めた。


冷たい空気の只中を、そのままとぼとぼ歩き始める。つんと痛い鼻の奥の感覚は、そのまま液体になって頬を濡らす。


足を動かしながらもぐるぐる、ぐるぐると思考は巡った。


──パパもママも私が好きじゃない。


きっと、役にたたない厄介者って思ってる。口には出さないけれど、私が何か失敗する度に──こうして苛められて泣く度に、苛立った様に「嫌なら魔法を使いなさい」って叩く。


ごめんね、メラのせいじゃないのにね。
叩いた後は二人とも そうして私に謝るけれど、きっと誰のせいだと分からないのがもっと駄目なんだって知っている。


「貴方に似たのよ」「いいやお前だ」「貴方の甥のアーガスだってスクイブじゃない!」
私のせいで恥をかいたとき、近所の人に笑われたとき、馬鹿にされたとき。ママとパパはそうして喧嘩になっちゃうんだもの!

*→←それは終わりで始まり



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
73人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» 神から神託を頂いた……だと……?ちょっと間あけてツク開いたら神のお言葉頂いてて平伏しました。やべぇ(語彙力消失)自分が逆立ちしても思いつかなかったアイデアで脳ミソが革命起こしてますどうしよう。絵なり文なり何かしらで形にしたいです好きです(一息) (2019年11月12日 20時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - (絵本にもなっていて、優しい絵柄で読み聞かせのたびに親の涙腺を殺してくる感じの話だったり…。ニュート自身が彼女の恋心に気がついていたかは別として、朴訥と見たままに書いているので、読む人には「ああ…」ってわかっちゃうアレです。(狼王のロボポジ) (2019年11月7日 19時) (レス) id: b4015b5421 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 完全に妄想なのですが、ニュートスキャマンダーが唯一書いた児童文学に、「Dragon girl」があったりしたら…と思っちゃったりしてます。 (2019年11月7日 18時) (レス) id: b4015b5421 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みかこ | 作成日時:2019年10月26日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。