トランクと脱出 ページ28
10歳の私はお仕置きだと思ってたの。
いつか誰かが出してくれると思ってたの。
この冷たい牢屋も鎖も全部魔法の幻で、パパとママに謝ればすぐに消えるって。
月光で光る蒼い鱗が、皆の嫌いな「出来損ない」を辞めた証拠だって信じてた。
『──君はどうして、こんな所に』
ーーー
ーーーーーー
「あの……温かい飲み物いかが?」
ひとりでに動くマドラーが、茶色と白の渦を絶え間無く掻き回す。男二人の寝室におずおずと入り、ココアを差し出したティナの背後からメラは慌てて中を覗いた。
ココアを喜ぶジェイコブと、意地のように寝たふりをして布団にくるまるニュート。一瞬クッションか何かで誤魔化してやしないかと不安になったが、見慣れたトランクがまだ部屋の真ん中にあった。──セーフだ。
「スキャマンダーさん──ほら、ココアだよ!」
懐かない動物をなだめるみたいに、ジェイコブに声をかけられるニュートの姿に思わず吹き出しそうになったが堪える。
いつもは私をそうやってなだめるのに。
頑なな彼の態度に苛立つティナに、メラは別室を言い渡された時から考えていた「とある作戦」の実行を仕掛けた。
「あのゴールドスタインさん──そういえばクイニーさんもゴールドスタインね──……ティナさん?私、やっぱりマスターと同室が良いの。
貴女達とは今日知り合ったばかりだもの、男女関係なしに、ここで一番信用出来るのはマスターだわ」
「……それにしたって」
「コワルスキーさんも米国紳士よ。それとも彼が
「まさか!……そんな!」
気合いの入ったジェイコブの否定が室内に大きく響く。必死に首を横に振り、クイニーに──ひいては彼女の姉にだけは誤解されまいと尽力する姿がいっそ健気だ。
それらしい理論を展開され、困惑したティナに少女は更に畳み掛ける。
「それに、逃げないようにしたいなら私を魔法で眠らせたら良いじゃない。
同行人が朝まで起きなかったら、流石にマスターだって逃げられないわ」
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みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時