Ep.19 心強い味方 ページ19
「……分かった。じゃあ、お願い」
静かな思慮のあと、コナンはそう言う。電話の向こうで微笑む気配があった。
確かに彼女は得体の知れない人物だが、情報屋としての腕は確かだ。何より緊急事態が起きている今、集められる情報は何であれ知っておきたかった。
『そういえばさっき電話かけ直してきたけど、周りに誰かいたの?』
「あ、うん。電話がかかってくる少し前に安室さんと話してたんだけど、一応目の届かないところに移動したんだ」
『……安室さんって、ポアロのあの人だよね』
一拍の間をおいて電話越しの声が低くなる。
「そうだけど……」
『ちょっと聞きたいんだけど、江戸川くんって安室さんのことどう思ってるの?』
「え? どうって?」
『こう……うさんくさいなーとか、不思議だなーとかさ。急にポアロで働き始めて毛利小五郎の弟子になった探偵なんて、なーんか怪しいと思わない?』
「べ、別になんとも……」
質問の真意が読めず、曖昧な返答をする。
ただ、明確に答えられない理由はそれだけではなかった。
安室透の本当の顔は喫茶店員でも探偵でもない。警察庁警備局の秘密機関に所属する公安警察、本名を降谷零。
とある組織に潜入中の彼は「バーボン」のコードネームを与えられ、「安室透」という仮名で毛利小五郎に近付いたのだった。
彼の本当の顔を知ってからは時に手を貸し合うほどの関係性を保っていたつもりだが、安室の部下である警視庁公安部の刑事が今回小五郎を逮捕し、安室はそれについて何も言わなかった。
ただ、「命に変えても守らなければならないものがある」とだけ。
事故として処理されかけたサミット会場爆破について、公安は事件として捜査を続けたがった。そのために突貫で容疑者をでっち上げたというのが今のところコナンの推理だ。
「そういうAさんこそ、安室さんのことはどう思ってるの?」
Aに真実を打ち明けるわけにはいかない。
それでも彼女は初めから安室に対して妙な態度を取っていた気がした。もし彼女が安室の正体を知っているのであれば今回の件では心強い味方となるかもしれない。
だが、しばしの沈黙のあと。
やや緊張の色を滲ませる声でAは囁いた。
『……江戸川くん……あの人には気を付けた方がいい』
「え?」
プツリと通話が途切れる。
咄嗟に耳を離すと、なんの変哲もない待受画面がただ表示されていた。
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(エモジシクジッタタメサイソウイタシマス) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます!!!!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして!ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい!! (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年11月25日 16時